回転寿司、インスタントラーメン、動く看板人形、ビヤガーデン、レトルト食品、公設市場、スキャンティ、折る刃カッター、おまけつき食品、電卓、プレハブ住宅、焼肉屋、頒布会、クレパス、自動車学校……。日本では大阪が発祥というものは数多くある。中には世界初というものもある。本書はそのようなものをとりあげてその来歴を簡単に紹介したものである。
月刊「大阪人」に連載されたルポをまとめたもので、まさに雑誌連載らしくコンパクトにわかりやすく書かれたものばかりである。多くはそれが大阪発祥であることが知られているものであるが、大阪に関心のない人にとっては本書でそのことを初めて知る人も多いだろう。
本書で著者が示したかったのは、大阪ならではのバイタリティとパイオニア精神であろう。ノーパン喫茶などの下世話なものがとりあげられていないのは個人的には残念であるのだが、まあいたしかたあるまい。
大阪発祥のもはまだまだあるし、特に町工場で作られたアイデア商品にものすごいものがあったりする。著者が参考文献にあげている本にはそれを示したものもあるのに、リサイクル紙トレーだけしかとりあげていないのは少し残念である。というのも、首からぶら下げる透明の名札などごく最近の発明で今や全国に広がっている商品が大阪発祥であることなどを書いたほうが、大阪人のパイオニア精神はまだまだ枯れていないことを示せるのにと思うからである。
そうでないと、過去の大阪はすごかったということを宣伝するだけのものになってしまいかねない。また、「大阪人」に連載していたのだから大阪人にも知られていない大阪発祥のものもたくさん紹介してもらいたかったという気持ちもある。
もっとくわしい本はたくさんあるので、本書はその入り口として「大阪学」入門書という感じで読まれてほしい。
さらに「はじまりは名古屋にあり」「はじまりは福岡にあり」「はじまりは広島にあり」などという各地方それぞれのパイオニア精神を示した本が続いて出てくれたらもっと面白いと思うのである。
(2008年1月15日読了)