ぼやき日記


1月22日(月)

 土曜日は京都。京阪電車に乗っていると、楠葉をすぎたあたりから雨が雪に変わる。京都につくと道に積もっている。寒い。雪の降る中を出町まで行って、クラシックファンの集まる「ショパンの会」の新年会。
 日曜日も京都。こちらは「たちよみの会」の例会。雪こそ降ってへんけれど、寒いもんは寒い。しおしお組長の大胆な発言があったりしておおいに盛り上がる。ここに書こうと思ったけれど、某SF専門誌の編集長に読まれたらまずいのでやめておく。某SF専門誌の表紙は来月は緒方剛志らしいけど、「電×hp」と間違うて買う若者がいてるのではないか、とか、寺田克也が表紙を書いたら「SF J×p×n」と間違えて……まあいろいろと話題になる。「本の雑誌」で大森望さんが「初心者向け」にティーンズノベルのリストを出しているけれど、これは北上次郎さんむけのリストでありこれがヤングアダルトを代表する小説と思われたら困るなあという話題にもなったけれど、誰の発言かは控えておく。私も同感だと思うたことは確かやけれど。「たちよみ」新年会は盛況のうちに終わり、がたがた震えながら帰る。
 月曜日は、朝から熱っぽく、欠勤し午前中はひたすら寝る。2日続けて寒冷地に行ったんがこたえている。酒を飲んで遊んで風邪ひいて仕事を休んだと誤解されたら困るので言うておくけれど、土曜日に京都に行ったんは新年会だけやなしに、かかりつけの医者で薬を処方してもらわんならんという大事な理由があったんですぞ。遊んでばっかりやないけど、ほとんど遊んでるか。
 いやいや、遊んでばかりはいられません。午後からはちゃんと仕事。とうに締切りが過ぎている原稿を一気に書いてしまう。ふだん使わない頭を使うたから、明日は知恵熱で休み、てなことはまずないと思います。
 というわけで、まるまる2日も更新を休んだんは3年前に修学旅行に行った時以来ですかな。あ、去年のSF大会の時もそうやったっけ。どっちにしても毎日家には帰ってました。それだけは律儀でありますね。

1月23日(火)

 マルセ太郎さんが死んでしまった。一度は生でその舞台を見たかった。本物の芸を満喫したかった。そやのに、私が知ってるマルセさんの芸は、正月のテレビでやっていた猿や鶏のあまりにもリアルで笑えない恐ろしい物真似だけ。映画再現の独り芝居は絶対見るべきやったのに、ついつい忙しさにかまけて大阪公演を見のがしているうちに、この時を迎えてしもうた。
 その著書『芸人魂』はそこらへんに転がってるタレント本とはまるで違う。マルセ太郎という芸人の生き方を凝縮した素晴らしい書物やった。なに、読んだことがない! それはもったいない。図書館でも古書店でもええから探して読みなさい。あれを読んで、私は「この人の舞台は見たい!」と心から思うたもんやった。そやのに見に行かへんかった。私はアホや。ほんまのアホや。何度もガンで倒れたと聞いてたから、次の大阪公演はと思うてたんやけど。こんなに悔やまれることはない。
 享年67。テレビのサイズに収まり切らない真のボードビリアンが、また一人、消えた。ボードビルこそは一人一芸。その人が死んだらそれで消えてしまう。この目に焼きつけておかんとあかんかったのに。
 謹んで哀悼の意を表します。

1月24日(水)

 コンビニは現代の世相をものの見事に凝縮した場やなあとは思うてるけれど、今日発見したスナック菓子なんか、そのものズバリやなあと思う。
 その名も「千年伝説」。中身はコーンパフのチーズがけ。袋にはキャプテンハーロック、トチロー、メーテルが書かれている。そうです、これは「松本零士スナック」なんであります。中にはおまけでカードが入ってる。私が今日買うたのには「クイーンエメラルダス」のカードが入っていた。裏には松本零士さん本人の解説が添えられている。全部で40種類あるそうな。「第1弾」と書いてあったから、今後も種類を増やしていく予定なんやろうね。
 しかし、なんで今頃松本零士? 特にブームが再燃しているというわけでもないのに。
 つまりカルビー「仮面ライダーチップス」の成功で、30代がターゲットにできるということになったんやろうね。グリコ「変身ヒーロースナック」は第2弾まで出て消えたけど。フィギアにラムネやキャンデーがついてるものも20年ほど前にはやったものが中心やし。
 私は松本零士ファンでもなんでもないんでこのあと買い続ける気はないけど、40種全部そろえようというような人もいてはるんやろうなあ。それでもそれほど売れるかどうか。なんか間違うてるような気がするぞ
東ハト
 ところで、この「千年伝説」スナックを見た同僚の20代前半アニソンファンの同僚A氏はしみじみとこう言うた。「こうやって、オタクはますます肥満度を増していくんですねえ……」。反論でけへんぞ。

1月25日(木)

 本日発売の「S−Fマガジン」で、ソウヤー来日のレポートに私のとった写真が使用されている。編集部の依頼を受けて提供したんやけれど、自分が撮影した写真が雑誌に掲載されるというのは初めての体験で、なんか変な感じ。デジカメでとった写真で、自分のパソコンで見るとなんとなくピンボケになってて「こんなんでええんかいな」とか思うてたんやけれど、紙面ではかなり縮小されてるんでアラが目立たへんでよかった。自分の文章が初めて活字になった時とはまた違う、なんとも不思議な気分であります。

 夕食をとっていると、ご飯の中に石ころみたいなものがまじっている。なんやねんと吐き出したら、銀色に光っている。歯のかぶせがころんと取れたんですわ。しかも、もとの歯はほとんど削られて根っこしか残っておらず、神経を殺して根っこのところにさしこんだ、まあいうたら差歯みたいなもの。接着力が弱くなってたんか、歯茎が弱ってやせてたんか、私の口の中に入ってるのが嫌になったんか、原因はわからん。
 歯がまるまる一個いきなり取れたわけやからね、かなりびっくりしてしもうた。なんでか知らんけど心臓はドキドキするし。あんなにショックを受けるもんなんかなあ。困るのは抜けたあとの穴ぼこに米粒がつまること。箸でかき出すわけにもいかへんし、つまようじでほじくり出したら歯茎に傷がついてそこから菌が入ってはれたりするのも嫌やからね。
 食後、すぐに歯を磨く。歯ブラシで抜けた穴のところを意識して磨いた。うがいをしたら吐き出した水が赤い。あまりきつくやり過ぎると血が出るんか。別に喀血してるわけやないけれど、口から血を吐き出すのはなんか嫌やね。歯医者でのうがいやったらそれはもうそういうもんと思うからそれほど抵抗はないけれどねえ。
 早いところ歯医者にいって直してもらお。あるべきところに空間ができているのはなんか落ち着かへんし、気になって食事もなんとなく味気ない。ついつい舌で穴ぼこを触ってしまう。それをしたらようないのはわかってるんやけどねえ。ああ落ち着かん。

 明日は都合で更新はお休みします。次回は土曜深夜の予定です。

1月27日(土)

 朝から服にペンキがついてクリーニング店に持って行ったりバタバタする。その足で歯医者に行って、抜けた差歯を元通りにはめてもらう。初めて行った歯医者やって、いつもこんでいるという評判のところ。それはうまいこといったんやけど、抜けたもんをはめただけで腕がええかどうかはわからん。しばらく通うことになりそう。
 それはそうと、歯科衛生士の若い女性が「そしたらアーンして下さあい」とかいう言葉遣いをするのはなんとかならんか。これまで、実家の近くの歯医者やら、今の最寄り駅前の歯医者やら、何軒か歯医者には通うたけれど、たいていの歯科衛生士の女性はこの「アーンして下さあい」と言うねえ。あれはなんでやろ。私みたいなヒゲをはやしたおっさんでも彼女らからしたら患者はみんな子どもみたいなもんなんやろか。茶髪で耳にピアスした子どもみたいな女性に「アーンして」と言われたら、腹がたつよりもなんか情けない気持ちになってくるね。
 たまたま私が通うた歯科にだけそういう歯科衛生士の女性が集まっているというような異常な確率で当たっただけなんやろか。それともどこの歯医者でもええ年したおっさんであっても「アーンして下さあい」と言われてアーンしてるんやろうか。
 そこで、今月の「
てなもんや伝言板」投稿テーマ(直メールも可)は「あなたの歯科衛生士『アーン』体験」であります。日本全国津々浦々、歯科医の助手の若い女性は必ず「アーン」を要求するのか?それともたいていは「口を大きく開けて下さい」というような言葉遣いをしていて、私だけが大当りなんやろうか。ぜひ教えていただきたいとかように思うのであります。
 あ、今月の投稿テーマということは、あと3日しかあらへんな。別に来月でもかまいません。先月はやってたんか。毎月してないやないか。そうですそうです。いつも何気なくふと思いついて募集してますよ。ええやん別に。
 ともかく、あの「アーン」はやめてほしい。患者をみんな子ども扱いするなーっ。

1月28日(日)

 通販CDのカタログが送られてきて、「日本の伝統音楽〜巨匠の至芸」というセットが目についた。
 今はCDショップに行くと「邦楽」というコーナーには歌謡曲やポップスばっかり並んでて、ほんまの意味の「邦楽」のCDは「純邦楽」というコーナーにまとめられている場合が多い。「純邦楽」というのもけったいな呼び方やなあと思う。そしたらポップスは「雑邦楽」かいな。いうならば「和製洋楽」とすべきでしょう。まあ、それはええ。
 で、カタログを見ていると「箏曲」「尺八」「長唄」「常磐津」「清元」「新内」「文楽義太夫」「琵琶」「端唄」「小唄」の10枚組。妻と二人で見ていて痛感したんやけれど、私の場合、「長唄」も「常磐津」も「新内」も「清元」もただぱっと聞いただけでは区別がつかへん。「端唄」と「小唄」も違いがわからん。これは、考えようによっては実に恥ずかしいことやないかとか思うんでありますね。
 三味線を使うた音楽が日常の生活に関係ないということがまず第一の問題で、歌舞伎を見に行く習慣がないというのが第二の問題で、古い言葉の言い回しがわからんというのが第三の問題か。あるていど基礎知識として「どない違うんや」ということくらいわかっていたいなあと思うたりするんやね。
 このCDセットを買うというのも一つの方法かもわからへんけれど、例えば「新内」なら「新内」だけのCDを聞き込み、ちょっと口ずさむくらいのことができたところで今度は「清元」のCDを聞き込む、という風にしていかんと、区別がつくところまではいかへんのやないかなあと思う。
 果たして、そんな時間をとれるかどうか。だいたい、そこまでして『勉強』して楽しいかどうか。区別できるだけの素養はほしいけれど、『勉強』として聞くのは嫌やし、というところかなあ。
 というわけで、カタログには簡単な解説が載ってたんで、それはちょっと置いといて、気が向いたらCDを買うというくらいにしておこうと思うた次第。まあ勉強するしないはともかく、教養として常識としてここらあたりは押さえておきたいとは思うてるんですけどね。

1月29日(月)

 この前の歯医者に行く。歯科医の先生まで「アーン」と言う。私は子どもやない! おまけに虫歯を削るだけで痲酔を否応もなく打つ。今日の歯の治療がすんだらもう行かへんぞ、あの歯医者には!

 今日の朝刊に「クローン人間計画」という見出しの記事があったんで、おおそれは凄いと読んでみたら、不妊治療のために、無精子症の夫の体細胞から核を取り出して妻の卵子に移植するというものらしい。
 うーん、なんか違うぞ。SF者としては「クローン人間」というのはあくまで体細胞を分裂させて同じ人間の複製を作るものというイメージがある。妻の卵子という遺伝子が入った時点で、もうこれは「クローン人間」とは別物と考えたい。
 さて、これが人道的に是か非かというと、現時点ではどちらとも言われへんね。夫の体細胞という点では精子もまたそうやと思うし、卵子に受精させるというところでいえば、これまでの人工受精に別な工夫を加えたものというように思う。ということは、人工受精の是非を問うことと本質的には変わらへんのと違うかな。
 「クローン人間」という考え方はSF小説ならではの発想やと思うし、その倫理的な是非に関してもクローンを扱うたSF小説で描かれている。新聞記者はSFは読まへんのかな。それとも「クローン人間」という概念自体がもうSFから離れて別な意味で使われるようになってるんかもしれへんな。
 というわけで、見出しの「クローン人間計画」という言葉から期待したものとはちょっと違う内容の記事でありました。ほんまに人間の複製がでけるようになったんかと一瞬でも思うてしもうた私が最近の科学情報に無知なだけやったんかもしれへんね。

1月30日(火)

 今日、書店で手塚治虫の「ユニコ」箱入り全3巻セットを買う。ソニーマガジンズの発行で、「オールカラー版」というので思わず買うてしもうた。
 ご存知の方はご存知やと思うけれど、「ユニコ」はサンリオが発行していた「リリカ」というマンが雑誌の創刊号から連載されていたもの。この「リリカ」という雑誌は海外売りを考えて左開き横組みオールカラーという体裁で作られていた。しかも正方形に近い変型版。このため、手塚治虫漫画全集に収められた「ユニコ」はページの上に変な模様を入れてカバーしていたけれどかなり縮小された上に白黒で、もとのカラー版のよさが失われていた。今度出たのは何度目かの復刊やと思うけれど、サイズは小さいものの、「リリカ」掲載時の形を忠実に復元しているところが嬉しい。
 ところで、当時私がリアルタイムで読んでいた「リリカ」(母が買うてきていた)には、確か山岸涼子の「落窪物語」が前後編で掲載されていたはずやけれど、あれは角川書店版の全集には収録されていたのかな。ページ数が少なくカラーで変な版形で左開きやから、単行本にもまとめにくいんと違うかな。
 そうやってつらつらと思い出してみると、「リリカ」には樹村みのりや大矢ちきなんて漫画家も連載していたなあ。けっこう凄いメンバーやったぞ。たぶんどれも1冊にはまとまってへんのやろうなあ。
 となると、この際やから「ユニコ」だけやなしに「リリカ」に掲載されていた漫画の傑作選をどこか出してくれへんもんかな。山岸涼子の「落窪物語」なんかがカラーそのままで収録されてたら、きっと売れると思うぞ。サンリオはたぶん出さへんやろうから、ソニーマガジンズでもどこでもかまへんけど、そういう企画を立てるところはないものか。もう一度読んでみたいぞ「リリカ」。どうしようもないのも載ってたけど、埋もれている傑作もあるはずや。
 「リリカ」傑作選が読みたい! そういう人は他にもいてると思うけどね。

 明日は都合で更新を休みます。次回は木曜深夜の予定です。


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