ぼやき日記


7月21日(土)

 プロ野球オールスター戦をテレビで見る。タイガースの野手が一人も出てへんのは実に寂しい。せめて盗塁王争いをしている赤星なりとも選出してほしかったけれど、まあセントラルの監督はあの長嶋さんですからね。ホームランバッターばっかりで打線を揃えたかったんでしょう。
 テレビ中継で腹がたったのはとんねるずの石橋貴明であります。選手インタビューの際になぜか東京のスタジオからとんねるず、キャイーン、ココリコ、ネプチューンといった芸人さんが「松井さーん」などと呼びかけてインタビューに口出しするという趣向になってた。ココリコの遠藤くんなんかいかにもファン代表という感じの素朴な質問をしてて好感が持てたけど、石橋は悪ふざけとしかとられへんような態度。だいたい自分が何者かも名乗らんのは相手に対して失礼や。ま、それだけ自分が偉いと勘違いしてるんやろうけどね。ジャイアンツの松井選手なんか「どなたですか?」ときいてるのに「ぶはははは」とか笑うたりして実に不愉快。フォローのつもりやろう木佐彩子アナウンサーが「あのですねえ」と交代したけど「この方はうちの偉いさんなんです」と続けたのにはあきれた。
 最近の野球ファンは米メジャーリーグの中継なんかも見たりして目が肥えてるはず。こういうばかげたやりとりからは「オールスター戦」を現在の日本プロ野球の最高峰たちがプライドを賭けている試合には見せず、プロ野球の人気者が集まって遊んでいるようにしか感じさせへということをテレビ局はわかっとるんかね。「米メジャーリーグと比べて日本の野球はレベルが低い」といわれる元凶やと思うぞ。
 フジテレビと石橋貴明は米メジャーリーグのオールスターでイチローや佐々木に対してこういうことができるかな。同じことができるというならやってみい。

7月22日(日)

 転居に向けて本の箱詰めをしていたら、藤田宜永さんの「ラブソングの記号学」(角川文庫)という本が本棚の奥から現れた。藤田さんはこのたびめでたく直木賞に輝かれたわけですけれど、まだ小説を本格的に書く前は、こういう仕事をしてはったんですな。解説は夫人である小池真理子さん。夫をなんとかひきたてようとするという感じがする。もう20年近く前の本やから、とっくに絶版になってる本やけど、直木賞受賞を機に復刊……はされへんやろうな。
 その他、脚本家の内館牧子さんがスニーカー文庫から出してた少女小説やとか、めちゃめちゃあどけない後藤久美子さんのエッセイ集「ゴクミ語録」(角川文庫)なんかついつい手にとって見てしもうた。これ、新居できちんと本棚に並べ直す時にまたいろんな本を手にとって見てしまうんやろうなあ。いかんぞいかんぞ。本を物として扱わんとなんぼ時間があっても足りんぞお。それができたら苦労はないか。

7月23日(月)

 パソコンに向かっていたら、団地の警報ベルがけたたましく鳴った。すぐにベランダに出る。団地からわらわらと人が出てきている。「すみませーん、うちでえす」ということで、これは間違うて非常ベルを押したことがわかった。まあなにもなかってよかったと再びパソコンに向かうとまたまた警報ベルの音。今度は道をはさんで向い側の団地や。またじきに止まるやろうと思うていたらいつまでも鳴っている。そのうち救急車は来るパトカーは来る。うちの団地からは子どもたちが飛び出してきた。妻も「見てくるわ」と飛び出そうとする。こういう時に部屋を空にすると泥棒さんが怖いので、私は飛び出したい気持ちを抑えて留守番。結局これも誤報やったらしくしばらくしてベルは鳴り止み救急車も帰っていった。
 泥棒も怖いけれど警報がなっても「また押し間違いでしょう」と〈狼と少年〉状態になるのが一番怖いね。実際、私の勤務している学校は生徒が遊び感覚で非常ベルを押すことが多いんで、警報が鳴っても「誰のいたずらや」てな言葉がまず口をついて出る。いくらふだん避難訓練をしてても、感覚が鈍ってるとほんまの火事の時に迅速に動かれへん。
 もっとも、誤報でよかったとは思うね。転居を目の前にして火事にでも遭うたらなんにもならんぞ。非常ベルの押し間違いは心臓に悪いわい。

7月24日(火)

 プロ野球オールスター第3戦、やっとまともな企画がでてきた。少年野球の子どもたちを外野席に招き、インタビューを受ける選手たちに子どもからの質問に答えさせるというもの。プロ野球選手に憧れる子どもたちを育成しないと今後野球人口は減るばっかりやからね。スタジオから「また今度のみに行きましょう」なんちゅう個人的な会話をするアホ芸人に見せてやりたいわい。私はふだんは日本テレビの野球中継には不満だらけなんやけれど、今回に限っては拍手を送りたい。野球中継なんやから、野球を楽しませることをまず心掛けるもんやないとあかん。後半戦からはあのくだらん「8時の男」というのをやめて放送席に子どものファンを座らせるくらいしたらどないや。ついでにジャイアンツ一辺倒の放送もやめてパ・リーグの中継もしなはれ。ついでにビジターの中継とホームの第2戦のみに限っては「ジャイアンツをほめない日」としたらよろし。そこまでしたら私も日本テレビの野球中継を認めたる。私が認めたからといて誰も喜びませんか。それは残念。

 明日は都合で更新できません。次回は木曜深夜の予定です。

7月26日(木)

 転居案内のハガキを大量に書く。年賀状のやりとりをしてる人はもちろんのこと、名刺交換をしただけの方にも出すことにした。いつ何時その名刺からお仕事がいただけるかわかりませんからな。
 で、宛名書きをしていて感じたことやけど、あの郵便番号というやつ、7ケタになって何が便利になったんかようわからん。というのも、郵便番号をきっちりと書いておいたら住所はかなり省略できるはずなんやけれど、どこまで省略したらええかわからへんのでありますね。確か町名までは省略できて番地だけ書いたらよかったんやと思うけれど、それを確かめるには「郵便番号簿」が要る。結局市町村から書きましたよ。郵便番号を書いたら早く着くという説もあるけれど、郵便番号がちゃんと書いてある「S−Fマガジン」は今住んでいるパナソニック市やと必ず発売日の翌日に着くぞ。ちっとも早いことないやないか。
 郵便番号があったら郵便局の人には便利かもしれへんけれど、書き間違えたら違う所にいってしもうたりしてかえって手間がかかったりもするみたいやしね。面倒臭いから、次回からは書くのやめにしようかなと思うくらい。
 これまた省力化とかいうて10ケタくらいに変更されたりするかしれへんぞ。しまいにはメールアドレスを書いたら住所なしで届いたりして。あ、それやったらハガキに書かんとEメールを送ったらええか。
 郵便番号なんかかえって不便やないかなあなどと考えながら、だんだん弱まる握力と戦いつつ表書きを書き上げたのであります。これでもまだ出し忘れてる所なんかもあるんやろうなあ。

7月27日(金)

 私の特技はサッカーです。球技のサッカーではありません。包装のことをサッカーというのであります。学生時代、5年間百貨店でアルバイトをしてたんで、箱を美しく手際よく包むのにはちょいと自信がある。繁忙期なんか冗談抜きで1日100個以上は包装していたね。
 百貨店で贈り物のために商品を注文して包装をしてもらうのを待ってる間くらいいらいらするものはない。そやかて包むの下手なんやもん。別に包みにくい形のもんやないのにべたべたセロテープを貼ってやね、箱を置く位置が悪いから最後に紙が余る。「私に包ませなさい」と言いたいのをぐっとこらえていらいらいら。
 で、今日は引っ越し先で近所に配る品物を妻が買うてきたんで、久々に腕を奮う。最初の1、2個はまだペースが戻らへんかったけど、それ以降はそれなりに包めるようになった。やっぱり若いころに体で覚えたコツなんかは忘れへんもんなんですなあ。
 横で見ていた妻がしみじみと言う。「他のことは不器用なんに、包装だけ見てたらすごい器用に見えるわ。不思議やねえ」。
 ほっといてちょうだい!

7月28日(土)

 早手回しに出した「引っ越しました」のハガキは、早いところではもう今日届いたみたい。実際の引っ越しは来週なんですけどね。ま、郵便物はちゃんとポストがあるから早いとこ新しい住所に出してもろうても支障はないからね。

 今日コンビニに寄ったら、コカコーラの瓶入りが売ってあった。もともとコーラは瓶入りやったはずやけれど、そういえば最近は見ませんでしたな。わざわざ「伝統のビン」と書かれた紙が瓶の首のところにかけてある。ほんまかいなと手にとってみれば違う違う。瓶の色が違う。昔の瓶は薄青い色が着いていたはずやのに、今日見つけたのは透明や。形だけ復活させてもおっちゃんの目はごまかされへんでえ。その上飲み口の栓は王冠やなしにネジ式のキャップやないか。どこが「伝統の瓶」やねん。
 「伝統の瓶」が復活したということは、その瓶を返すケースもあるはずと探してみたけど、これがない。だいたい瓶入りの飲料というのはその瓶を洗うて何度も使うというところが肝心なんと違うんか。ケースがないということは、この瓶は飲んだら瓶用のゴミ箱に捨てよということか。それって、何か間違うてるように思うぞ。つまりこの瓶は形だけは「伝統の瓶」でありながらその精神は伝統とは何の関係もないものになってると、そういうことみたいやね。昔の瓶の形を復活させたらおっちゃんたちが懐かしがって手にとると思うたか。まあ、手にとるのは手にとったけど、買いませんでした。というか、もともと私はふだんからコーラを飲まんのや。
 コーラ好きの人はやっぱり買うてみるんでしょうか。堺三保さんはもう買うて飲んだんでしょうか。ペプシコーラのボトルキャップ攻勢に押されてコカコーラは苦しいんでしょうか。ま、これが起死回生のヒットになるとは思われへんのやけどね。

7月29日(日)

 ああもう引っ越し直前やというのについつい選挙速報を見てしまうわい。いかんいかん。
 予想された通り自民党圧勝のもよう。まあ今回は小泉首相の人気投票みたいな感じになりましたな。しかしなあ、NHKを見てたら大阪選挙区は開票0%で早くも2人の当選確実を出しておったぞ。出口調査の結果やろうけれど、もし調査した有権者がみんな嘘をついてたらどないすんねんと思うぞ。私の父は「誰に投票したかは人に言うもんやない」と選挙の度に口癖のように言うてたんで私はそれが常識やと思うてたけれど、どうやら違うみたいやね。
 しかし父の考えは確かに間違いやないと思うね。無記名投票の選挙なんやから、自分が誰に投票したかをべらべら喋ったら無記名にしている意味がないからね。父は若いころ地元の衆議院議員の人を支援したりしてたらしいから、そういった意識がはっきりしていたんかもしれへんね。
 まあ、根拠があって当選確実を報じてるんやと思うけれど、「大阪選挙区開票率0%です。当選確実が2名出ています」というのはいくらなんでもあんまりやと思うたぞ。せめて1%でも開票してから当確を打たんとおかしいんやないかと思うぞ。

7月30日(月)

 妻がマンガ雑誌「プチフラワー」の今月号を見せてくれた。「ここ、このページ」と開いてみせてくれた。竹宮恵子さんのエッセイマンガであります。竹宮さんは京都の精華大学マンガ学科で教授をしてはって、その様子を毎号見開き2ページのエッセイマンガで紹介してはるんですな。
 なんとなんとそこには「若い非常勤講師」としてこの日記では再々登場願っているおがわさとしさんが「マジメな漫画家のおがわさとし先生!」という肩書き付きで出演してるではありませんか! 彼からは精華大で講師をしているという話は聞いていたけれど、あの竹宮恵子先生のマンガに「若い」だの「マジメ」だのという褒め言葉付きで出演できるまで親密になっていたとは! 奥床しいおがわさんはそんなことを自慢げに言い触らしたりはしません。私やったらさも天下を取ったように喧伝するであろうに。ここらあたり、人間としての出来というものの違いを感じてしまうわけやけど。
 竹宮先生描くところのおがわさんはなんかもう若々しい好青年。それでも特徴の大きなお鼻はしっかりと描かれているぞ。あ、でもまるで手塚治虫先生の鼻そっくりではないか。ええなあ。さあ、あとはおがわさんの描くマンガがヒットすればさらに知名度アップだ! たぶん「プチフラワー」の読者は「おがわさとし先生」と紹介されていても「誰?」というところやないかなあと思うからね。

7月31日(火)

 山田風太郎さんの訃報に接する。7月28日、死因は肺炎。享年79。
 高校生のころ、角川文庫でどぎついピンク色の背表紙の本が並んでいるのは気にはなっていた。で、それを手に取るとあのうまいんだかへたなんだかようわからん佐伯俊夫という画家の妙な表紙があって、カバー袖のところにはおもしろそうやけどちょっと怪しい雰囲気のストーリー紹介があって……。これは大人の読むもんやとなんとなく感じた。結局浪人時代に「くノ一忍法帖」を読んだのが一番最初。こらおもろい。これは読み出したら勉強にならんと辛抱し、本格的に読みはじめたのは大学に入ってから。もっとも、大学時代は入っていた同人誌で「海外SF文庫総チェックリスト」なる企画をやったりしてた関係で、そうまとめて読めたわけやなかったけどね。それでも「伊賀忍法帖」「甲賀忍法帖」と読み、映画化された「伊賀忍法帖」も見にいった。その映画でデビューした渡辺典子さんが実によかったなあ。いっぺんに彼女のファンになって、映画「里見八犬伝」のヒロインが彼女から薬師丸ひろ子に変わったと知った時は激怒した。いやこれは山田風太郎とは関係あらへんけど。
 でもね、実は私が好きなのは「明治波涛歌」をはじめとする明治ものなんです。同時代に存在した人物のありやなしやの接点をみごとに作り出して明治時代の人物たちに新しい視点でスポットを当てた。山田風太郎の明治ものを読んでから、私は明治という時代に関心を持つようになった。晩年は室町時代を舞台にした作品が中心になったけれど、これも山田風太郎らしい視点で、とにかく秩序も何もドガチャガになった混沌の時代というものを書かせたら、こんなに生き生きと筆の冴える作家というのはまずいてへんやろうと思う。
 自分の死さえ「あと千回の晩飯」などいう人を食うたようなタイトルのエッセイで笑い飛ばした。「戦中派不戦日記」に見られるように人が簡単に死んでいく時代にそれを相対化して見ることのできた希有な人物、それが山田風太郎。
 最近復刊された文庫のシリーズは必ず買うようにして、今は引っ越し用の荷物の中に埋もれてるけれど、雑誌の書評連載が終わって新刊を必死になって追いかけへんでもよくなったら、じっくりと腰をすえて読みたいと思うている。
 山田風太郎の作品は私に大きな影響を与えたわけやない。けど、なんかもう読みはじめたら止まらへん。そういう作家やった。いつまでも新しい読者に読み継がれているのも不思議なことやないと思う。
 謹んで哀悼の意を表します。

 さて、いよいよ明日は転居も本番。まずは明日一日かけて荷物の運び出し、そして明後日は荷物の運び込み(どんなに荷物が多いか……ほとんど本やけど)。というわけで、2日間更新はお休みします。次回更新は金曜の深夜の予定。新居からのぼやき日記ということになります。


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