ぼやき日記


10月1日(月)

 古今亭志ん朝師匠の訃報に接する。享年63。死因は肝臓癌。お兄さんの先代金原亭馬生師匠は酒で癌になって亡くなってはるんで、志ん朝師匠も酒かなあと思う。
 私は残念ながら実演に接したことがない。よく大阪にも来てはったんやけれど、行きにくい場所でやることが多くて「また次の機会」と思うていた。行ける時に行っとかんとあかんね。
 そやから私が見た高座は全てテレビやし、あとはCDで聴いている。江戸時代の人がタイムスリップしてきたみたいな味わいのある高座で、そこは志ん生を父にもつ生まれながらの噺家らしいところかもしれへん。粋で明るく艶がある、野暮ったさはかけらもない。こういうタイプの噺家は上方落語にはちょっと見当たらへん。いや、東京落語でも当代の名人である柳家小さん師匠をはじめとして、立川談志、柳家小三治、三遊亭圓楽……どなたも持ち得ない個性やないかな。
 東京落語の本流を行き、末代まで語られる名人となるべき人がこんなに若くで亡くなってしまうなんて……。なんというか、ショックである。ほんまに一度生で聴いておくべきやった。
 謹んで哀悼の意を表します。

 明日は所用で遅くなります。次回更新は水曜深夜の予定です。

10月3日(水)

 マスメディアによる情報操作というのは恐ろしいもんですなあ。
 というのも、1日に甲子園まで行ってタイガースとジャイアンツの試合を見たわけやけれど、私は一塁側のアルプススタンドにいてたからとにかくあの試合は和田選手引退を惜しむムードで満たされていたと感じた。和田選手の守備位置に打球がとびそれをさばくと歓声、ヒットを打つと歓声、出塁してホームを踏むと歓声。試合終了後の引退セレモニーは球史にその名を残す大選手のそれのよう。それに対してこの試合が最後のユニフォーム姿となるジャイアンツ長嶋監督については、ダグアウトから出てきたらジャイアンツファンが盛んにフラッシュをたいて写真を写してはいたけれど、球場でクローズアップされたのは和田選手の引退セレモニーの前に桧山選手が長嶋監督に花束を渡した時だけ。
 ところが、家に帰ってスポーツニュースを見たら甲子園球場全体がまるで長嶋一色に染まっていたような報道の仕方やないか。世の中にそれだけ長嶋ファンが多いということなんやろうけど、あの日あの時甲子園にいてへんかった人たちにとってはあの試合は長嶋監督のための試合やったという印象が残るわけなんやろうね。
 湾岸戦争がゲームを見ているような感覚で戦争をとらえられ、世界貿易センタービルへのテロが特撮映画を見ているような感覚を覚えさせたのとどこかで共通しているような気がする。フセイン大統領、ビン・ラディンやタリバーンの実像は我々に正しく報道されているのか。あの試合になぞらえるならば、アメリカが長嶋監督でフセイン大統領やタリバーンが和田選手ということになってるかもしれへんのやないろうか。
 たかが野球中継でさえ、というか野球中継程度やからこれだけ簡単に情報を操作できる、というわけやなかろう。多くの人間が現場を知ることのでけへんことについて高度に政治的な情報操作ができるのは当然やからね。なんでゲリラ組織がテロという手段をとっているのか、その解析を欠落させた上で旅客機がビルに突っ込むシーンを何度も何度も見せて敵愾心を煽ることくらい、簡単なことやないのか。
 もっとも、甲子園の三塁側のスタンドで観戦してたらまた印象は違ってたかもしれへんけどね。ここらあたり、見る側の主観の問題やとは思う。それでもあの試合は当然長嶋監督よりも和田選手を主役とした試合やった。それだけは事実。ほんまに情報操作は怖い。

10月4日(木)

 CDのボックスセット「河合奈保子シングルコレクション JEWEL BOX」(日本コロムビア)を買う。CD4枚組に加え、ビデオクリップを収録したDVDが1枚入っている。これはDVDのサイズがCDと同じやからできることやね。ビデオテープやLDやと大きすぎてセットとしての統一感に欠ける。これからはこういうセットが続々と出てくるんやないやろうか。DVDプレイヤーの普及率にも関わってくることではあるけれど。それでもこういう形でセット販売されたらそれを機会にDVDプレイヤーを購入するという人もいてるやろうから、ソニーや東芝みたいに家電部門とレコード部門を持っている企業グループなんかはこういう売り方を積極的に進めていくかもしれへんね。実際、CDの普及を推進したのは当時のCBSソニー(現・ソニー・ミュージック・エンターテインメント)やったという記憶がある。
 もうひとつ感心したのは、このCDがマスターテープを日本コロムビアがクラシック部門で行っているデジタル・マスタリング方式でCD化していること。音質が劣化したマスターテープをクラシックのCD製作で培ったリマスタリング方式で再生し、クリアな音質にしている。最近では東芝EMIが「ミレニアム ウルトラマン ベスト」というCDでやっている。これまでやったらアイドル歌謡やテレビ主題歌なんかはマスターのコピーをそのまま音質なんか気にせんと寄せ集めたりして「ベストCD」なるものをこしらえたりしていたわけで、それがクラシック並に音質を考えるようになったんやと思うと隔世の感があるねえ。マニアックに音質を追求するのはクラシックやジャズの愛好家だけやなくなったということかな。
 そういう意味ではこの「河合奈保子シングルコレクション JEWEL BOX」というのはなかなか画期的な企画かもしれへんね。元アイドル愛好家としては喜ばしい限りであります。

10月5日(金)

 携帯電話には相変わらず1日1〜2通「出会い系サイト」なるものへの案内メールが届いてくる。一時はいちいちそのサイトに飛び「ご質問はここ」という項目をクリックしてそのアドレスに「迷惑しています。登録はしません。メールは送らないで下さい」とメールを書いて送っていたけれど、最近はやめている。
 というのも、全て違う「出会い系サイト」からメールが送られているからで、これはもうどうしようもない。面白いことに、それぞれのサイトのトップページは全て同一のレイアウトやねんな。唯一違うのはサイトの名前だけ。あ、連絡先のアドレスも違うか。システムも全部いっしょ。男性はポイント制になっていて最初に何ポイントかが無料で与えられ、ポイントを追加するのには現金を相手の銀行口座に振り込まんならんシステムになっている。登録してへんからそこから先はわからへんけれど、おそらく相手のプロフィールかメッセージでも書いてあるページでもあってメールを送れるようになっているんでしょう。そこらあたりはだいたい想像がつく。
 それにしてもこうまで同一フォーマットの「出会い系サイト」が山のようにあるというのは驚きやね。これを全部一人の人間が運営しているとは考えにくい。今まで20以上のサイトに「メールお断り」の返事を出した。これだけの者を維持、経営していくのは大変やと思う。
 で、ふと思い出したのが以前パソコンの方に来た「一獲千金メール」。「在宅で簡単に高収入」というタイトルのメールやったけれど、「出会い系サイト」の運営をしたら月に50万〜100万の収入が得られるとかいうメールであまりにあほくさいんですぐにゴミ箱行きにしたけど、あれと違うやろうか。内容をくわしく覚えてへんのやけれど、月にいくらか上納金を支払うだけで後は自分の腕次第とかなんとか書いてあったように思う。
 これならあれだけ同じフォーマットの「出会い系サイト」があるのに合点がいく。誰か一人ホストコンピュータを持ってる人がいて、サイト運営を申し込んだ者はそのコンピュータに自分のサイトを持つことができる。会員のポイント追加のお金はサイトの運営者の口座に行き、そこから上納金が支払われる……ということかな。これもだいたい想像がつく。
 各サイトの運営者は同じ親分からメールアドレスの一覧を買うか金を払ってホストコンピュータからメールを送ってもらうかするのやろう。そやからいちいち「メールお断り」の返事を出しても違うサイトからメールがくるんやろう。これもまた想像がつく。
 となると親玉に直接アクセスするしかないんかな。携帯電話の端末ではできることは限られてるし、ちょっと難しかろう。
 というわけで「出会い系サイト」についてはその仕組みはほぼ想像がついたけど、迷惑メールへの最も有効な対策は想像がつかへん。携帯電話の端末から親玉のホストコンピュータにアクセスする方法はないものか。どなたかくわしい方、教えて下さいよ。

10月6日(土)

 なんですて、「旗を降ってみせろ」というのは「同時多発テロに対する報復活動に参加せよ」、という意味やなく「どっちにつくかはっきりさせろ」という意味ですて。そんなアホなとしか言いようがないね。それやったら自衛艦を出航させる前に言えよ、駐日大使。
 つまりこれは一連の日本の対応や国会の様子を見て「わしらは内政干渉してるんと違うもんね」と言い訳をしてるようなもんやないかな。なんかもう今回のテロへのアメリカの対応を見てるとあの国が「オール・オア・ナッシング」の原理でしか動かれへんのと違うかという感じがするね。「お前味方、こいつ敵」という単純な図式でこれまで動いてきたツケが回ってきたと思う。「アフガニスタンは悪い国。悪い国は国民全部が悪い。経済制裁で難民が出てもそれは国民全部が悪い」というような発想でやってきて、民間人を巻き込む悪質なテロを仕掛けられると「わしらは被害者。だからどんな形で報復してもかまわん。わしらに協力しない国は全て敵」とやる。それに従って小泉首相があわてて「協力します協力します」とやったら「そんなことまでせんでよろしい」とか言う。なにかもう付け焼き刃というのか泥縄というのか。
 とにかくテロはいかん。そやけど「盗人にも三分の理」というからね。やったことはいかんけれど、彼らをそこまで追い詰めた責任者は誰かということも考えて対処せんと、日本みたいな無防備な国がテロの標的になったらもうむちゃくちゃですぞ。
 米国大使がそない言うんやったら、自衛艦は引き上げて海岸線にようけ設置されている原子力発電所の護衛をさせたらどないや。自衛隊は国民を守るために組織されたものなんやから、そのように運営したらええのと違うの。
 戦争というのはあくまでも外交の延長線上にある解決手段の一つでしかない。外交の無策を糊塗するために戦争を起こすような本末転倒だけは避けてほしいと思う。ま、外務大臣と外務省の官僚が喧嘩してるような状態では健全な外交を求めるのは無理かもしれへんか。もうむちゃくちゃにござりまするわ。限られた情報しか知らされへん我々にはなにがなにやら。

10月7日(日)

 今日はバリバリ原稿を書いて本をがばがば読んで、の予定やったんやけど、原稿は午前中に書評を1本書いて送稿しただけで終わり、読書は午後しっかり爆睡してしまい、夜はつい「モンティパイソン アンド・ナウ」という映画のビデオを見て過ごしてしまい、予定とは全く違う過ごし方になってしもうた。ビデオを見てから妻と英国式のギャグについてディスカッションしてしまう。つまりそういう夫婦です。
 いやそれにしても映画版の「モンティパイソン」はギャグがえげつない。ここまでしてええんかというほどの差別ネタが多く、これはやはり英国が階級社会やからということと関係がありそう。字幕版やとそのニュアンスが伝わりにくいきらいがあるからDVDで出ているのはちょっと買う気にはなられへんのです。今日見たのは1000円で安売りしていたのをずっと以前に買うた日本語版。むろん、広川太一郎、納谷悟郎、山田康雄、青野武、飯塚昭三といったテレビ吹き替え版でおなじみの声優さんが出演している。私は映画は字幕が基本やと思うてるんやけれど、こういったひねりのきいた文化的な背景がわからへんと原語版が理解でけへんような喜劇映画は吹き替えか無声映画の方がよいと思う。ただし、翻訳する脚本家と演ずる声優がちゃんとしていての話ですけどね。広川さんたちの演技を聞いてると、「モンティパイソン」はこの吹き替えに限るなあと感じた次第。
 疲れがたまってるからというてこういう逃避をしてはいかんなあ。明日もカレンダー通り休みなんで、原稿書きと読書をばりばりやりますぞおーなーんて言ってみたりしてみたり。

10月8日(月)

 みなさん、今日は体育の日なんですよ。知ってました? やっぱり体育の日は10月10日やないとねえ。感じが出ません。

 とうとう始まりましたな、空爆が。これで日本もテロの対象になったということか。ぞっとするね。私は自分の住んでるところが無事やったらええという心の狭い小市民やから、戦争に巻きこまれるのをものすごく恐れていた。今のところ「アメリカは本気やで」ということを示すための空爆みたいやけれど、タリバーンかて黙ってへんやろう。となると、目には目を歯には歯をでお返しのテロがくるぞ、きっと。
 最初の同時多発テロが実施された時すぐに、元傭兵の人やらが「アメリカが攻撃してもタリバーン政権がゲリラ戦を展開したら戦争は長期になる」と予測してた。別に元傭兵やなくてもベトナム戦争が泥沼化していった状況を考えたら、これがすぐに解決することやないとはわかったはず。
 ということは、この攻撃はどちらかというとアメリカ国内向けのパフォーマンスやないかという感じもするな。ブッシュ大統領の発言でエキサイトした国民に対して「ほらほら、私はちゃんと報復を始めましたよ」とPRしているように見えるんやけれど。実際、爆撃した場所には確かに軍事施設なんかがあったりするけど、本来の目標であるビン・ラディン氏がそこにいたわけやない。
 あとは同盟国向けに「私は攻撃したぞ。あんたらはどう声明を出す」と宣言しているようにも思う。いわばリトマス試験紙ですな。色が変わるか変わらんかしかない。ph試験紙みたいに中間はないんです。パキスタンの大統領の苦しそうな声明を見てると、よけいにそう思う。
 さて、とうとう始まったぞ。あとにはひかれへんぞ。この先世界はどないなるんやら。ほんまに大変なことになってきた。

10月9日(火)

 本ホームページも本日分から5年目に突入しました。まさかここまで続くとは思うてませんでした。これも皆様のおかげです。読んでいただいてると思うから書くのにも張り合いが出る。今後もアホが好き勝手にぼやいていきますが、なにとぞよろしくお願いします。

 まあ毎日ぼやいてもいられへん。
 今日は私の勤務校にテレビ撮影班がやってきた。NHK教育テレビの「ストレッチマン」の収録であります。ストレッチマン役の宇仁貫真さんと、ディレクター、カメラマン、音声と照明の係、そしてよくわからんけど年輩の方の5名という小さな所帯。生徒たちは「今日はストレッチマンに会える!」と楽しみにしておったんですが、収録は小学部が対象で、われわれ高等部は直接会われへんかったんです。それでも「ストレッチマンがトイレから出てきた!」「廊下を歩いてた!」と少し遭遇しては大喜び。
 私は授業の空き時間を利用して撮影の見学。体育館の2階調整室から見下ろす。怪人役のH先生が派手な衣装に身を包み「おどろけー、おどろけー、もっとおどろけー」と懸命の演技。この衣装は実はNHKから決まった額の予算をいただいて学校で作るんですな。私はNHKの美術さんがこしらえてると思うてたんで、ちょっと驚いた。美術の先生の力作であります。何度か取り直しをしながら、それでも私が思うていたほどNGもなくすいすいと撮影は進む。まあ先生の仕事の時間を割いてやってるんやから、ある程度時間は短めにということなんでしょう。
 控え室ではH先生はストレッチマンから演技指導を受けていたもよう。全国ネット、しかも日本津々浦々に電波の届くNHKやからね。これでうちの学校もちょっとは有名になるかな。ならんか。
 それにしても撮影風景はなかなか楽しく見学できました。ほんまに少人数のスタッフなんにはびっくりしたけれど。手作りの面白さ、という感じですな。今月末には放送ということなんでビデオに録画してゆっくり見よう。

10月10日(水)

 プロ野球のシーズンが終わると、なんか気が抜けたように物足りない。私はたとえタイガースが負け続けようとやっぱりその試合を見るのが好きやねんなあと思う。テレビ中継がなくてもラジオ中継で、ラジオ中継がなくてもiモードの試合経過中継サイトでという具合に追いかけているわけです。
 そやからというわけやないけれど、今日は「ルパンIII世 カリオストロの城」をビデオで見たりする。実はこの前生徒にレクリエーションとしてアニメ「名探偵ホームズ」を見せたんやけれど、久しぶりに宮崎駿”まんが映画”の楽しさを再確認し、どうにもこうにも「カリオストロの城」を見たくて見たくてたまらんようになったんです。
 何度見ても面白いものは面白い。お姫様とメカニックという「男の子の夢」がたっぷり詰まっている宮崎”まんが映画”はよろしいな。深刻なテーマがないほうがよろしい。純粋にその気持ちよいテンポと間にはまってしまえる。
 で、「カリオストロの城」の制作年度を見たら1979年! そうや、私はまだ高校生やったなあ。確かかげぼしさんといっしょに見に行ったんや。「カリオストロの城」のヒロイン、クラリスはたぶんその当時の私たちと同世代のはずやから、あのまま年をとっていたら40前の中年女性になってるわけか。うううむ。アニメのヒロインを現実と混同したらあかんとはいうものの、そない考えると時というものは残酷やなあ。クラリスおばさんか。夢がないなあ。
 ルパン一家の声優さんの声もルパンIII世が代替わりして(私は密かに「ルパンIV世」と呼ぶ)しまい、あとの方たちの声はかなり老け込んでいらっしゃる。今に全員の分をクリカンが吹き替えることにもなりかねん。
 いや実は今日、鼻毛に白髪を見つけてしもた。頭髪やヒゲには白いものがまじってるけれど、とうとう鼻毛にまで……。若い頃見た「ピンクのカーテン」という映画で美保純が中年の愛人のアンダーヘアに白いものが混じってるのを見つけて指摘しているシーンがあったなあ。あれってすごい残酷なことやと思うぞ。
 ま、クラリスの年をとったところは見たくはないけれど、現実に年をとった私は「カリオストの城」を見ている時だけは高校生に戻ってしもうていたね。さてクラリスおばさんはどんな年の取り方をしているやろか。


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