ぼやき日記


12月11日(金)

 家に帰ったらえらく体がだるくしばらくへたっていた。あまりにだるいんで体温を計ってみたら37.5°Cある。くしゃみが出たり洟が出たりのどががさがさしていたから風邪をひいたことはわかってたけど。熱がではじめてるらしい。
 教師などという仕事をしてると生徒から風邪をもらうことが多い。実は担任しているクラスに風邪で休んでいる生徒がいるんです。たいていの風邪は抵抗力がついているからそんなにきつくならんのやけど。
 きつかったといえばもう10年前のこと。当時私は定時制の高校で講師をしてたんやけど、ある生徒から風疹をうつされたことがある。高熱は出るし発疹はきついし肝機能まで低下するし、あれはほんまにしんどかった。しかも学期末でちょうど成績をつけんとあかんという時やったから、よけいにきつかった。熱にうなされながら成績をつけ、ふらふらしながら学校まで持っていく。ちょうどボーナスが出ていたので事務室にもらいにいくと若い女性職員が「休んでも年休扱いにならへんの。私にもうつして」などという。こんなしんどいもんをうつしてもらいたがるなんて変な奴とと思ったけれど、たぶん事務作業が忙しい時期やったから、彼女も休みがほしかったんやろうなあ。あの人どうしているかしら。
 どうも生徒から風邪をもらうとあの時の風疹のことを思い出す。もう二度とあんなのはごめんです。

12月12日(土)

 風邪はそうきつくならずにすんだ。でも、薬でおさえてるだけやから油断したらどうなるかわからん。
 京都の医者にいく。なぜわざわざ大阪から京都の医者にいくか。実はもう何年も常用している薬があって隔週でその薬をもらいにいかねばならんのだ。
 せっかくわざわざ遠出をしたのだからと、帰りにはいつも買い物をする。今日は寺町に寄って「ポストペット」の新しいヴァージョンを買う。ちょうど発売日だ。ガチャポンの人形みたいなのがおまけについている。3種類のセットがあってそれぞれ違う。全部そろえようと思ったら3つも同じものを買わなならん。しかも「ポストペット」にはプレゼント用と称して同じ内容のCD−ROMが2枚も入ってる。同じCD−ROMを6枚も持ってたって仕方あるまい。でも、人形を全部そろえたい人とかいて3セット買うたりするんやろうな。私はそこまでやないので1つだけ買う。
 「駸々堂京宝店」に行くと、手に本を持った人たちが長蛇の列をなしている。なにごとならんと思ったら、宮内洋サイン会をやっていたのです。あの「仮面ライダーV3」やら「快傑ズバット」やら「ジャッカー電撃隊」に出ていた俳優の宮内洋である。最近、昔ヒーローの主役をしてた俳優さんがよく本を出してるけど、今度は宮内洋の番、というわけやね。けっこう広い本屋なんやけど、どこを歩いてもサイン待ちの列がある。どこがどうつながってるんかわからんぐらいだ。あれこれと本を探すだけに入っただけの者からしたらまったくもって歩きにくい。
 帰り際にサインをしてるところを見てたら若い女性の求めに応じて記念写真をしたりしてる。「はいっ、では次っ!」やたら声がでかい。しかし、生で聞いても声は若々しい。顔はさすがに若い頃ほど肌つやはよくないが、さすがに男前やった。
 なんか最近京都の本屋に行くとはサイン会に遭遇するなあ。

12月13日(日)

 なんか久々に完全休養日。「S−Fマガジン」の年間総括の原稿の締切まであと1週間しかないんやから準備としてリストアップ作業とかしようなんて考えてたのに、半日寝倒す。TVも見ないし本も読まない。まあこういう日も必要か。
 これだけで終わってしもうたんでは何やし、昨日の話を少々。
 CDショップではクラシックの輸入盤を今年売れた順番に並べて安売りをしてた。買い逃した人は今のうちに、ということやろね。
 ベスト1は「ヨーヨー・マ・プレイズ・ピアソラ」。サントリーのCMが火付け役になってかなりヒットしたらしい。ピアソラ自体はここ数年クラシックではかなりはやっていて、ヴァイオリニストのギドン・クレーメルがレコーディングしたのが火付け役になって、セルシェルのギターとガロアのフルートによる「ピアソラ・フォー・トゥー」などのヒットもあり、いろいろなアーティストがこぞってアルバムを出した。タンゴのコーナーでもピアソラ自身の録音は売ってたんやけど、クラシックの売り場にもタンゴが並ぶという、クロスオーバーというんかなこれは、そういう状況があったわけです。
 そこにチェロの達人ヨーヨー・マの参入とあいなったわけだ。もともとヨーヨー・マはピアソラが好きで録音もしたかったんやけど、そこらへんはレコード会社の事情とかもあるしプロデューサーがうんといわんといくらアーティストがやりたくてもすっとは通らんのやね。ところがここ数年のブームで企画が通ったということやと思う。
 これは実はずっと以前に妻が買うたのを聴かせてもらったりしてるんやけど、CMで聴いてる分だけと違うて他のも実にいいね。実はヨーヨー・マのチェロよりもバンドネオンやらギターの音の方がよく聞こえてくるんやけど、ところどころ低く鳴っているチェロの音色が演奏をぎゅっと締めているという感じ。これはクレーメルのヴァイオリン盤と聴き比べるのもいいかもね。クレーメルもいい。でもどうしてもヴァイオリンが前面に出ていて野趣というようなものがないんです。ちょっとお上品かな。そこらへんではヨーヨー・マの方がよりピアソラの原曲の味を出してるような気がする。もっとも、私はふだんタンゴは聴かないんであまり偉そうな口をきけたもんではないんですが。
 ああら、ピアソラのことばかり書いてしまった。しかしまあ、去年は確か「アダージョ・カラヤン」という企画ものがトップやったから、ちゃんとした新録音がトップに来たというのはとてもええことではないかとかように思った次第。

12月14日(月)

 風邪が治らず、売薬でだましだまし仕事に行ってる。微熱がだらだらと続くというだるい状態。だいたい私は子どものころに扁桃腺をちょん切っているせいか、風邪をひいても高熱を発することが極めて少ない。それまではちょっとした風邪でじきに高い熱で寝込む子どもやったんです。
 けれど、こういうやりかたやったら絶対に体に無理がくるから早いとこ医者に行って注射の1本も打ってもらうのが一番。ではありながら、困ったことに近所にかかりつけの医者というのがいない。だから、迷わず診てもらう医院がないんやね。
 結婚当初にインフルエンザにかかった時にいった医者は「どうや、注射、打ってほしいか?」と言うた。患者にきくなよ、そんなもん。自分の判断で打てよ。以来、その医者には行かんことに決めた。
 もっと近いところに総合病院はあるんやけど、こういうところは待たすだけ待たしといて流れ作業のように患者を診察するというイメージをぬぐいがたい。去年、原チャリで事故った時にレントゲン写真を撮ってもらいにいったことがあって診察券もあるんやけど、その時もさんざん待たされて実際に診てもろたのはわずか数分やった。待っている間に、確か「ライトジーンの遺産」(神林長平)を読んでいた。なんでそんな細かいことを憶えているのかようわからんけど、思い出したんでついでに書いておく。
 近所の人にきけばええやんかというようなところやけど、私が帰るころにはどのお家も夕飯の支度という時間帯で、外には誰もおらない。わざわざ電話できくというのもなんやし。職場の同僚に、かつて近くに住んでたという人がいるのできいてみたら、「うーん、ぼくはそのへんは小児科しか知らんなあ」。
 なんかこう、飛び込みで医者に行くというのはちょっと勇気がいるし、ねえ。まあええわ。家からは少し離れてるけど、最寄りの駅前に内科があったぞ。何度か通ったけど、けっこう患者でいっぱいやった。繁昌してるということは信頼できる医者ということであろうと半ば強引に決めつけて、明日行ってみよう。
 京都の実家の近所にかなり腕のよい内科医院があったんやけど、わざわざそこまで行くわけにもいかんしなあ。かかりつけの医者を作っておくというのも大事なことであるね。

12月15日(火)

 今日から年賀状受付やて。そんな暇あるかいな。
 ところで、昨日の日記に書いたように、仕事の帰りに医者に行ってみた。そこは内科の他に、循環器科と消化器科の看板を掲げている。なるほど、内科というても専門があるからね。なんか台の上に立たされて体を透視するカメラみたいなもので胸のところを見られたりする。「もう少し右に回って」「はあ」「早すぎる。もう一度、ゆっくりと」「はあ」「今度は左に回って」「はあ」というようなやりとりの後、「肺も気管もきれいなもんや、大丈夫」。
 軽い風邪ということで「一般的な風邪薬」というのを処方してもろうた。
 このお医者さんの場合、肺炎とかそういうものになったりしないかというところが心配になるんやろうね、たぶん。
 結婚前、京都の実家にいたころのかかりつけのお医者さんは肝臓が専門やったらしい。診察室に医師免許やら学会からの賞状みたいなものが飾ってあったけど、確か「肝臓学会」とか書いてあったと思う。正確な名前は忘れたけど。
 このお医者さんは問診の後、聴診器で心音などを聴いてから今どき珍しく打診を実にていねいにやっていた。あのとんとんと叩く音でどこが悪いかわかるらしいが、最近、あまりこの打診をするお医者さんというのにはあたったことがない。このお医者さんはそのあとベッドに横にならして肝臓のところをぎゅうぎゅうと押す。「痛いか」「いいえ」「ここはどうや、痛いか」「そんなに強く押されると痛いです」「そうか。念のために血液検査をしとこう」てなやりとりを、風邪ひきのたびにやっていたことを思い出す。このお医者さんは肝炎になってないかが気になるんやろうね、たぶん。
 そういえば、今日診てもらったお医者さんは打診はしなかったな。そのかわり、聴診器はかなり長いこと聴いてた。ほんまにお医者さんによって診かたはいろいろ。
 どんなお医者さんでもええから、とにかく風邪を治してくれたら私はそれだけでありがたいんやけれど。

12月16日(水)

 風邪薬が効いてる間はいい。鼻水は止まるし熱も下がる。薬が効き過ぎて眠くなるのはちょっと困る。授業でしゃべっている最中に睡魔に襲われるのはたまらんよ、ホンマに。朦朧としていては人に教えられるものやない。
 たまらんのは薬の効力が切れたら反動でだるくなること。家に帰って体温を計ったら、結局医者に行く前と変わらんかったりする。何のために医者に行ったんや。
 要は仕事を休んでゆっくりしなさいということか。なかなか休んでられない事情というのもあるねんけど、大事をとった方がええんかもしれんね。体が弱ってるのに無理を続けてるというのが一番の原因かも。
 とにかく家に帰ったらへたってしまい、掲示板にレスをつける気力すらない。本を読むのもしんどい。本を読まんといられない私がこんなに読まれへんというのはもう信じられんぐらいですわ。

12月17日(木)

 とうとうやりましたね、クリントン大統領。困った時のイラク攻撃という感じですね、これは。議会が「大統領弾劾決議」を出す直前、というところがミソ、かね。時期的にはいかにも唐突やね。
 しかし、アメリカの大統領が自分の政治声明に危機を感じるたびに攻撃されたんではイラク国民もたまったもんやないね。フセイン大統領が悪かろうとなんだろうと、この攻撃のタイミングではそういうことになるからね。
 さてさてクリントン大統領は残りの任期中にあと何回外国に攻撃をしかけるんやろねえ。確かこの人、当選した時は反戦のハト派とかいわれてたんと違うたかいな。なんかもうキューバ危機の時のケネディ大統領みたい。あっそうか。クリントンはケネディの再来でしたな。なるほどなるほど。
 それやったら情事も大物女優とすればよかったのに、ねえ。

12月18日(金)

 昨日はイラク爆撃で今日は北朝鮮の潜水艇撃沈ですか。なんかきな臭くて嫌になるなあ。明日は何が起こるやら。
 ところで、今朝新聞を読んでたら、徳間書店の広告のところに小さく「日本SF新人賞創設!」の告知を見つけた。主催は日本SF作家クラブ。やっとみこしをあげたか、という感じ。SFが冬やとか氷河期やとかいわれたりしてたのにはいろんな理由があるやろうけど、新鮮な戦力が次々と供給されてないところにも問題があったと思ってたしね。
 ミステリにしてもヤングアダルトにしても各出版社が新人賞を作ってどんどん新人をデビューさせてる。途中でつぶれる作家もいれば大輪の花を咲かせる作家もいる。じっくりとマイペースで作品を発表し続ける作家もいる。
 これがSFには欠けてたんと違うかな。早川書房が「SFコンテスト」をやめて久しい。そちらに応募したかった人でもヤングアダルトの賞しかないのでそれでデビューした人もいる。ホラー小説の賞やファンタジー小説の賞でデビューした人もいる。むろんそのあとに「S−Fマガジン」に書いたりもするわけやけど、どうしてもSFを中心に書く作家とはみなされんよね。
 ここに「SF」を冠した賞がSF作家クラブの主催でできたことはかなり意味のあることやないかな。以前ミステリ作家の人たちと会食した時に「これからはSFですよ」と言われて戸惑ったことがあるけど、「ハルキ文庫」の復刊とかも含めて、SFに風が少しずつ吹きはじめてるような気がしてきたぞ。
 ここからすごい実力の新人が続々登場してくれることを切に願う。
 私は「SF童話」を書いて子どものうちからSFになれ親しむような環境を作るとかしてみたくなってきた。
 今日は医者に注射を打ってもらって元気回復してきたので、なんか少しずつ力がわいてきたよ。

 12月20日(日)は「たちよみの会」の例会です。京阪神近郊の方はのぞきにきてみて下さい。

 明日19日は「日本芸能再発見の会」の懇親会。遅くなるので次回の更新は20日の深夜の予定です。

12月20日(日)

 昨日は「日本芸能再発見の会」の懇親会。大阪南港中埠頭にある「ハイアット・リージェンシー・ホテル」が会場。新野新代表の挨拶で始まり、芸能の話であれこれ盛り上がる。
 私は新野さんに直接質問をぶつけてみた。
 実は京フェスで「S−Fマガジン」編集長の奥様にきかれたことがあるのだ。
「20年ほど前、月亭可朝さんが司会の大喜利で、フォーク歌手のイルカが最後にぼけて落とす番組を故郷の山口で見たんだけど、そういう番組、ありましたよね」。
 その場にいた田中啓文さんや田中哲弥さんもわからず、私もわからへんかった。よしそれなら新野さんにきいたらわかるやろうとうけあったのだ。
 新野さんはちょっと考えて「僕はその番組は見てないなあ。そやけど、可朝さんが司会のそういう番組はあったと思う。イルカがそういう役回りを演じた可能性はあると思うけど、レギュラーやのうて2、3回くらいのゲストやろうね」と答えてくれはった。
 まあ、新野さんでもはっきりしたことは言われへんということらしい。
 ぶしつけな質問をして新野さんには悪いことをしたけど、今度「S−Fマガジン」の(塩)編集長と電話した時に、教えてあげよう。

 今日は「たちよみの会」の例会。大阪市大のかつきよしひろさんや京大SF研の岡田さんなど若い人たちとワイワイ。キャラ萌えの話とかで盛り上がる。
 帰りの電車で、かつきさんが言うてたことが印象的。
「『ハヤカワ文庫』はクラークやハインラインの作品はどんなものでも残してるのに、たとえばゼラズニイなんかは切らしてるんですよね。代表作を1冊だけでいいから必ず棚に置いておいてほしいんですよ」。
 若いSFファンは古典となった作品を簡単に手に入れることがでけへんで困ってるんやね。私の学生時代はひととおり手に入ったものが今では古本屋を回らんと手に入らん。若いSFファンを育てるという意味ではかなり大きな問題やと思う。
「溝口さんと言ってたんですよ。あと10年早く生まれてたらなあって」。
 この声、関係者に伝わるとよいのだが。

 明日は職場の忘年会です。帰りが遅くなるので、次回の更新は火曜日の深夜の予定です。


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