ブック・レヴュー


ニセコ要塞1986 1 利尻・礼文特攻篇
荒巻義雄著
中央公論社 Cノベルス
1986年7月20日第1刷
定価680円

「SF作家は、楽器を奏でるエンターテイナーであると同時に、SFを武器として戦う批判者でもなければならないという作者の持論を、いよいよ実践するつもりです」という作者のことば通り、北海道を舞台としたシミュレーション小説である。といってもフォーサイスや森詠のようなPFではない。二分され戦場となっている北海道は我々の知っている世界の北海道ではなく、1986世界という住民が全て情報管理された世界であり、敵対する陣営はIBMとスミノフという暗示的ではあるが抽象的な国(?)名である。兵士たちは「一九八四年」よろしく戦う原因も理由も意味も考えてはいけない。
 戦闘シーンは、メカマニアが描くそれより寒々とした感覚を与えてくれるし、兵士たちの非戦闘時の姿も慰安婦たちとの会話などで作者曰くの「政治的」効果をあげている。
 ただ、1986世界の謎を解くキーワードを「ハルマゲドン」としているのが気になる。少し手垢がつき過ぎて、先が読めるような気がするのだ。ま、何にせよ、次巻以降の展開が楽しみ。作者の硬派な部分が作品に反映して傑作となる予感がいたします。

(「SFアドベンチャー」1986年11月号掲載)


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