ブック・レヴュー


石の血脈
半村良著

 「収穫」でハヤカワSFコンテスト入選後、雌伏の時を過ごしていた半村良が伝奇SFという舞台で雄飛した記念碑的作品である。
 この作品で半村良は、吸血鬼伝説、人狼伝説などを現代によみがえらせ、病液の注入、遺伝といった科学的な発想をもってリアリティのある吸血鬼、人狼像を作り上げた。
 病液を注入され石化する人々。彼等は血液を摂取し続けなければ完全に石と化してしまうのである。それと引き替えに永遠の命を得るという信仰に踊らされる人々。人間の欲望というものを不死の命を餌にあおり、その醜さを赤裸々に描いてみせる。
 この作品により、国枝史郎などから続いてきた伝奇小説の系譜に連なる作家として半村良の名は刻まれることになった。しかも、新たにSFという要素を注入し、荒唐無稽な印象のあった伝奇小説を現代に通用するものとして復活させた功績は大きい。

(「S−Fマガジン」1998年2月号掲載)

附記
 「S−Fマガジン」通巻500号記念特集で発表された「SFオールタイムベスト」の作品紹介を、という依頼を受けて書いたもの。


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