ブック・レヴュー


妖星伝
半村良著

 全七巻にわたるこの巨大な物語こそは、半村伝奇SFの集大成である。半村良は本書において、伝奇的手法とSFを融合させ、生命の秘密、人間という存在の謎を追い求めたのである。
 時は江戸時代、八代将軍徳川吉宗の末期から田沼意次全盛期にまたがる爛熟の頃。鬼道衆という謎の集団がいた。彼等は幸福なるものを不幸に陥れ、秩序を破壊することを最大の喜びとしていた。彼等はその主人たる外道皇帝の復活と黄金城の発見を望んでいた。外道皇帝とは何者か。それは、この地球を生命で満たし、過剰になった生命が互いに食い合わねばならない妖星とした、補陀洛人という精神生命体の宇宙人なのであった。
 なぜ外道皇帝は地球をそのような星にしたのか。外道皇帝の復活と黄金城の発見は地球に何をもたらすのか。
 二十年もの歳月をかけて完結させた半村良の最高傑作であり、ライフワークとなった作品である。

(「S−Fマガジン」1998年2月号掲載)

附記
 「S−Fマガジン」通巻500号記念特集で発表された「SFオールタイムベスト」の作品紹介を、という依頼を受けて書いたもの。


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