野田昌宏といえば、スペースオペラ紹介の第一人者。翻訳も数知れず。
そんな「宇宙大元帥」が自分がもっとも読みたいスペオペを自分で書き出したのだ。野田スペオペの集大成。
「星界企業」という宇宙の何でも屋には社長ムックフォッファをはじめ、ロケ松、キザ又ら腕ッこきの宇宙船乗りが集まって無茶をしてでも持ち込まれた仕事はやりとげる。そのキャラクターの多彩なこと、やり取りの絶妙なこと、なんとなく江戸前落語の情緒がただよっているのだ。きわめて日本的な、日本人のためのスペオペなんですな。
外伝は整備工のお七とネンネがまきおこすユーモアあふれた失敗談。お七の語り口が本伝とは違うこれまた江戸落語のイキ。
第一部のタンポポ村消失事件が終わり、現在は第二部進行中。
深刻なことは言いっこなしだ。これぞ野田節の至芸なり。
(「S−Fマガジン」1998年2月号掲載)
附記
「S−Fマガジン」通巻500号記念特集で発表された「SFオールタイムベスト」の作品紹介を、という依頼を受けて書いたもの。