ブック・レヴュー


グイン・サーガ
栗本薫著

 全巻完結の暁には百巻になろうという前人未到の大長編。もちろん作者最大のライフ・ワークである。
 「私もコナン・サーガみたいなヒロイック・ファンタジーを書くのだ」と宣言した栗本薫は、豹の頭をもつ思慮深く知恵の働く主人公を創造した。
 辺境ノスフェラスに突如現れた豹頭の戦士は「グイン」「アウラ」の二つの謎の言葉以外は、過去の記憶をなくしていた。彼が助けた双子の姉弟はパロ王家の王女と王子。野望を抱いた傭兵イシュトヴァーン、美貌と陰謀の宰相アルド・ナリスらを軸に、無数の登場人物の織り成す一大絵巻である。
 このシリーズに影響を受けた異世界ファンタジーがヤングアダルト小説を中心に一つのジャンルとなるほど、その存在感は大きい。
 イラストレイターも、加藤直之、天野喜孝と交代し、現在は末弥純。それぞれに独自の「グイン・サーガ」の世界を描いている。

(「S−Fマガジン」1998年2月号掲載)

附記
 「S−Fマガジン」通巻500号記念特集で発表された「SFオールタイムベスト」の作品紹介を、という依頼を受けて書いたもの。


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