読後、一人の作家の名を思い出した。福島正実。本書の作風は、未来文明をペシミスティックに展開した彼の短編群を思わせる。意余って力足らず、みたいな所までも。
新しい発想でコンピューターSFという新ジャンルを作ろう、と、コンピューターの新しい利用法をSFとして展開した短編集で、『Oh! PC』誌に連載されたものだ。その意気込みは買えるし、専門的な知識からでたアイデアも、従来のSFに似かよったものはあるが、良いものが多い。が、どうしても古臭いアイデアに見えてしまうのだ。これは小説としての構成に新味がないからである。展開といい結末といい、創成期のSF作家がよく使った形を(本人は意識してないだろうが)踏襲しているように思える。
作品としては「ガイアの子供たち」「コンサートジャック」のアイデアに見るべきものがあるが、全体的にオチが強引で意味不明の作品が目につく。つまり小説作法を身につけるのが今後の課題といえよう。なんにしても第二作を期待したい。
(「SFアドベンチャー」1986年12月号掲載)