ブック・レヴュー


魔王伝1
魔界都市ブルース
菊地秀行著
祥伝社ノン・ノベル
1986年7月20日第1刷
定価690円

 脂ののっている作家の作品を読むのは楽しい。菊地秀行は、今、最盛期ではないかと思えるぐらい、どの作品も充実した出来である。
 本書は先に出た『魔界都市ブルース』と設定を同じくするもので、長篇版というわけである。『魔界都市ブルース』は人情噺といった趣のある味わい豊かな短編の連作であったが、本書は一転してお得意のアクション編である。
 仇敵の浪蘭幻十がいい。まだ性格がはっきりしてないが、好漢、秋せつらに対抗させるには充分の相手だ。こういう対決テーマは好敵手の存在感に話の出来がかかってくる。幻十は合格。新宿を”魔界都市”に変えた”魔震”とは何か? そして二人の熱闘の結末は? と、お楽しみを次巻以降にのばしているのが悔しいが、キャラクターの肉付けの旨さやストーリーの運びのテンポなど、このまま順調に話が進めば著者の代表作となることは確かだろう。
 ただ惜しいのは、謎の少女・真弓や女秘書美奈など女性のキャラクターの弱さ。他の男連中より存在感が薄いのだ。姿かたち以上の何かがあるはずですが、どうか。

(「SFアドベンチャー」1986年11月号掲載)


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