ブック・レヴュー


ミステリーゾーン2
ロッド・サーリング著
矢野浩三郎・村松潔訳
文春文庫
1986年8月25日第1刷
定価680円

 現在近畿地方では『トワイライトゾーン』を深夜に再放送している。昔、『ミステリーゾーン』の題で放送していた頃、評者はまだ子供。従って初めて見たわけだが、古臭さは感じず、かえって新鮮な気分を味わっている。昔の番組って何かしら一生懸命でいい。本書はその小説化の第二弾だが、企画・脚本のサーリング自身によるもので、テレビとは一味違うさりげないタッチがよろしい。当然評者の知らない話ばかりで、独立した短編集として読んだのだが、こういう短編集は好きな方なのです。”皮肉な結末”なんて手垢のついた言葉が鋭く鮮やかに蘇って来た。パターンも手をかえ品をかえで決して飽きさせない。作風はサキ三分、O・ヘンリ七分といったところで、時折泣かせる話があり、ほのぼのしみじみを楽しめて嬉しい。集中では「真実のみ」のサキ風の味、「柔和な人のクリスマス」の心あたたまる話がおいしい。映像的なものを特に意識させることもなく、その点、凡百のノヴェライゼーションとは一線を画している。ノスタルジィで読んでしまうには少しもったいない。いわゆる「小味な秀作」の詰まった好短編集といえるだろう。

(「SFアドベンチャー」1986年12月号掲載)


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