ブック・レヴュー


W3(ワンダー・スリー)

 醜い戦いの続く地球−−この星に住む人間たちに存続する価値はあるのか?
 銀河同盟は、ボッコ、プッコ、ノッコの腕利き調査員三人組「ワンダースリー」を地球に派遣。一年間の調査の結果如何では、反陽子爆弾ですべてを消滅させるよう命じた。
 それぞれウサギ、カモ、ウマの姿に変身した三人は、地球到着直後に事故にあうが、正義漢の星真一少年によって命を救われる。
 しかし地球にはつねに争いの芽はあった。
 宇宙からの攻撃を目的とした「ガイコツ衛星」の実験計画。その阻止にあたっていたのは、秘密諜報機関フェニックスのF7号−−真一の兄、星光一であった。
 一方、地球人びいきをするボッコへの腹いせにプッコが隠した反陽子爆弾は、A国の手に渡っていた。取り返そうとするワンダースリーだが、地中にもぐった反陽子爆弾を追って、地球の中心に到達したところで円盤は故障してしまう。彼らを救い出すことができるのは、真一少年だけだった……。
 虫プロによる「鉄腕アトム」に続く連続テレビアニメの第2弾として、企画が先行した作品。当初は「ナンバー7」のタイトルで、星光一と宇宙リスのボッコを主人公にしていたが、同様の設定を「宇宙少年ソラン」に使われてしまったため、ボッコをウサギに変え、動物も2匹加えたストーリーに変更した。
 連載開始は1965年「少年マガジン」であったが、同誌に「宇宙少年ソラン」が連載されることになったため6回で中断、「少年サンデー」で再度連載を始め、66年まで続けて完成させた。
 テレビアニメは、雑誌連載と並行で、65年から1年間放映。「ウルトラQ」が裏番組として始まったため視聴率が悪化し、後半は放送時間を30分間遅らせることにしたり、脚本陣に唐十郎が加わっていたりと、こちらもエピソードが多い。
 漫画の結末はタイムパラドックスを使ったユニークなものになっているが、アニメでは真一の願いで地球爆破までの期間は延長され、ボッコは地球人の少女に変身して一人だけ残留するというロマンティックなものである。
 国際謀略アクションと本格SFと学園ものの三つの流れを並行させるというユニークさや、登場人物の楽しさなどで独自のカラーを出している傑作。ゴミためからなんでも作ってしまうノッコの作ったタイヤ型の乗り物ビッグローリーやフェニックス隊員の使う腕時計兵器などの小道具の使い方もうまい。

(「SF Japan vol.3」2002年1月冬季号掲載)

附記
 「SF Japan」の特集「手塚治虫スペシャル」で、現役作家による手塚作品のリスペクトが行われた。その際、元の作品を読んだことのない読者のために、私が各作品の解説を書くという大役を依頼された。作品のあらすじ、初出誌、アニメや映画になったことなどももれなく書くようにという注文で、このためにそれぞれの作品を全て読み返した。かくしてできあがったのが、この文章。
 あまりにもストーリーを圧縮しすぎて、どんな話かよくわからないようになってしまっている。付随するエピソードを書くことに力を入れすぎてしまったためである。なお、参考資料として少年画報社発行のアニメムックを使用した。「ロマンアルバム」が発売されて間もない頃のもので、内容的には幾分物足りないが、同種の資料が現在ほとんどないだけに実に助かった。なんでも買っておくものである。


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