『エンデュミオン・エンデュミオン』でデビューした平谷美樹は、『エリ・エリ』で第一回小松左京賞を受賞した。現時点で発表されている作品はこの二編のみ。だから、今後どのような形で化けるのか、予測しがたいものがある。
とはいえ、これらの作品を通じて感じられる彼の特質は、日本SFの申し子、という点であろう。
彼は神とは何か、人類とは何かという壮大なテーマに愚直なまでに真正面から取り組んでいる。これは戦後の日本SF作家が、とりわけ主流としてこのジャンルを支えてきた作家たちが取り組んできたテーマでもある。
現時点での平谷美樹は、意余って力足らずと言えなくもない。しかし、今後もこのテーマに愚直にアタックし続けていったとしたら、いずれは日本SFの王道につながる作家としての存在感を示す可能性を秘めている。
実はこういったタイプの作家は意外に少ないのではないだろうか。そういう意味で、平谷美樹は貴重な存在なのかもしれない。
だから、彼にはひたすらこの方向性を貫き続けてほしい。そして、本格SFの書き手としてより大きく成長していってもらいたいのである。
デビューしたばかりであるから、今後どのように大化けするのか予測がつかない部分もあるが、期待の注目株であることだけは間違いない。
(「S−Fマガジン」2001年2月号掲載)
附記
「S−Fマガジン」21世紀到来記念特大号PART1日本SF篇で発表された「21世紀SFのキイパースン」の作家紹介を、という依頼を受けて書いたもの。