架空戦記のブームが本格的になる少し前に、ゲームデザイナーという前歴を持つ若手作家が颯爽と登場した。その作品は『征途』。作者の名は佐藤大輔。
微に入り細を穿つごとき設定、独特の乾いた文体、必然と偶然が綾をなす展開、そしてその設定や展開に隠された遊び心。
それらは戦記マニアだけではなく、ＳＦファンからも熱狂的なファンを生み出すだけの魅力を持っていた。やがて彼は一つのジャンルにまで育った架空戦記のトップランナーとなる。
しかし、彼の才気は架空戦記だけにはとどまらなかった。壮大な宇宙史をつむぎだしたかと思うと、異世界ファンタジーにも挑戦する。ハードボイルド小説も彼の指呼のうちにある。
いずれの作品も一読して佐藤大輔とわかる独自のカラーを備えている。それは、デビュー以来変わらぬ、設定、文体、展開が三位一体となった彼だけの世界なのである。
現在、彼はゲームデザイナー時代からその世界を構築し続けている『レッドサン・ブラッククロス』を中心として執筆活動を続けている。これこそ彼のライフワークというべきものであろう。
二一世紀、彼はどこまで作品世界を広げていくのだろうか。その行く手を注目したい。
ただ一つ注文があるとしたら、それは未完の作品が多過ぎるということ。まずはそれらの完結を待ちたい。
（「Ｓ−Ｆマガジン」２００１年２月号掲載）
附記
「Ｓ−Ｆマガジン」２１世紀到来記念特大号PART1日本ＳＦ篇で発表された「２１世紀ＳＦのキイパースン」の作家紹介を、という依頼を受けて書いたもの。
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