ブック・レヴュー


21世紀SFのキイパースン
霜島ケイ(しもじまけい)

 『封殺鬼』シリーズの第一巻を読んだ時には、それがただならぬものの開幕だとは気が着かなかった。しかし、巻を重ねるごとに、その世界は凛冽な魅力で私をとらえてしまったのである。
 千年の歴史を生きる二人の鬼と、彼らを使役する陰陽師の一族。その一族の間の確執。さらにその隙を突くように暗躍する魔性のものたち。物語は重層的に構築され、巻を重ねるごとに深みを増し、完結の暁には壮大な伝奇小説の傑作としての評価を得るだろう。
 試しに霜島ケイの他のヤングアダルト小説を読んでみた。おかしい。何かが違う。確かに独特のユーモア感覚にその魅力の一端を感じさせないではないが、『封殺鬼』のような陰影を感じられないのだ。
 私の目利き違いだったのだろうか。その全体像がつかめないままに手にとったのはホラー小説のアンソロジーで、そこには霜島ケイの短編が収録されていた。
 あった。私の知っている霜島ケイの世界がそこには広がってた。彼女もまたオコサマ向きの作家ではなかったのだ。キーワードは〈鬼〉。『封殺鬼』とは違う形で〈鬼〉が扱われている。それは光と影の淡いに生じる異形のもの。彼女は希有な〈鬼〉作家だったのである。
 我々が20世紀に忘れてしまった陰影を、霜島ケイは21世紀に蘇らせる。そして、そこに描かれる〈鬼〉は読み手の心象を反映したものにほかならない。彼女は新世紀にどのような〈鬼〉を見せてくれるのだろうか。

(「S−Fマガジン」2001年2月号掲載)

附記
 「S−Fマガジン」21世紀到来記念特大号PART1日本SF篇で発表された「21世紀SFのキイパースン」の作家紹介を、という依頼を受けて書いたもの。


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