『セレーネ・セイレーン』は間違いなくＳＦだ。ロボットと人間の恋というテーマを新しい視点で切り取ってみせた。『ＥＤＧＥ』シリーズは一見サイコミステリーのように見えるが、まぎれもないＳＦだ。超能力という手垢のついたテーマに新たな解釈を加えてみせた。ただＳＦというだけではない。優れたＳＦなのである。デビューから３作、立て続けにこれだけのものを書ける実力派はそうはいない。
ところが、ＳＦ大会で本人の弁を聞くと、彼女は”やおい”のつもりでこれらを書いているという。なんてこった。確かにそう読ませる要素はある。が、それは副次的なものであって、ほんとに書きたいのはＳＦなんだと勝手に思っていた。男の限界と笑わば笑え。
とみながはつまり、書きたいものを突き詰めていったら半ば無自覚的に本格ＳＦに到達したという希有な新人だったのである。驚くべきことではないか。
さらに注目すべきはその構成力である。詳細な舞台背景や、その物語の前後のストーリーなどを見通した上でそれぞれの作品は書かれている。いわば、新人として登場してきた時点で作家としての完成度が高かった。しかも、一作ごとにその技法は充実しつつある。
とみなが貴和の強みは、ＳＦであることだけにこだわらずにその世界を広げられるという点にあるだろう。反面、今後は本格ＳＦを求められたときに、かえって意識しすぎてしまうおそれがある。
枠にはまらない魅力を維持し続けてほしいものである。
（「Ｓ−Ｆマガジン」２００１年２月号掲載）
附記
「Ｓ−Ｆマガジン」２１世紀到来記念特大号PART1日本ＳＦ篇で発表された「２１世紀ＳＦのキイパースン」の作家紹介を、という依頼を受けて書いたもの。
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