平成９年納めの場所が始まった。横綱曙の休場で少し寂しいが、大関武蔵丸の動きは思っていたよりよかったし、大関貴ノ浪も得意の土俵際逆転勝ちで初日を飾ったし、大関陣が働いてくれそうでやれやれだ。
期待の学生相撲出身ののホープたちは、そろって敗れた。しかも負け方がよくない。栃乃洋は立会いから全く足が出ず、貴乃花にポンと肩を叩かれただけで沈没。土佐ノ海は相変わらず後一歩というところで足が流れてしまう。無双山はバタバタと急いで出て簡単にすかされて土俵を割ってしまうし。出島ときたら完全に小城錦の術中にはまってなにもできないまま土俵の外へ。今の相撲界は彼等にかかっているというのに、なんともはや。唯一、玉春日が負けはしたけれど、自分の相撲をちゃんととっているのが救いか。
栃東は堂々の相撲。立会いに注文つけたりしないで、今日のような相撲を千秋楽までとり続けてほしいものだ。そうすれば、自然と大関の声もかかってくるだろう。
今日、注目していたのは小錦、栃乃和歌、琴稲妻、寺尾といった私と同世代のヴェテラン力士たちの動きである。小錦は、苦しいなあ。朝乃若の立会いの変化にビクついたように足が出ず、もたもたと自分から土俵を割ってしまった。今場所限りではないかと、いやな予感がよぎる。森下一仁さんごひいきの栃乃和歌の相撲はよかった。若手の千代大海に動き負けせず、技ありの投げ。型を持っている力士は見てて嬉しくなってしまう。これは、相撲ファンでないとわからない嬉しさかも。琴稲妻も寺尾もよく動いていたし、勝ち負けは別として言うことなし。
世間ではサッカーのワールドカップ予選に耳目が集中しているが、こちらも一時の人気こそないとはいえ熱い１５日間が連日続く。一日一番だけでいいから、手に汗握る相撲を見せてほしいものである。
（１９９７年１１月９日記）
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