大相撲小言場所


九州場所点描

 平成9年九州場所も6日目を終え、中盤戦に突入した。ここまでで気がついたことをいくつか書いておきたい。
 まず、貴闘力の不振である。貴闘力の身上は思い切りのよさと最後まであきらめないしぶとさである。ところが、ここまで1勝5敗という星取以上に内容が悪い。粘りがなくずるずるといくことが多く、彼本来の相撲を全くといっていいほど取れていない。もともと痛風という持病がある力士だが、どこか悪いのではないか。勝った一番も危うく引き落としで負けるところだったように、足が出ていない。貴闘力が強い場所は活気があり、手に汗握る相撲を何度も見ることができる。それだけに、この不振は残念だ。カモにしている横綱曙が休場しているので元気がない、なんてことはあるまいが。
 次に、若乃花の連敗を見て感じたこと。5日目の栃乃洋戦にしても、6日目の土佐ノ海戦にしても、割りといい体勢にあるのに強引な投げにいって墓穴を掘っている。なぜあんなに焦る必要があるのか。どこか体に悪いところがあってそれをカバーするために速めに勝負をつけようとしているのか。解説者は「強引な投げがいけませんね」と言うばかり。そんなことは素人にもわかる。なぜ大関がそんな強引な相撲をとるのかを解明してこそ解説者といえるのではないのか。玉の海さんや神風さんがご存命なら何と解説したか聞いてみたい。
 栃東の怪我は残念だ。4日目の旭豊戦で右足首を痛めたのだが、ここは休場すべきだと思う。相撲がとれる状態でないのに無理に出場し、さらに悪化させれば慢性的なものになるかもしれない。父親がついに膝のサポーターを取ることなく現役を引退したようにはなってほしくない。境川理事長が何を言おうと、ここは将来のために無理をしないことだ。まだ20歳、先は長い。
 6日目の十両取組、三杉里対大飛翔戦で、三杉里が大飛翔にのしかかるように寄ると、大飛翔は膝を折るようにして崩れ、前のめりに倒れた。これは典型的な「さばおり」という技である。ところが、場内アナウンスでの決まり手は「あびせたおし」。アナウンサーも解説の花篭親方もそれについて何もいわない。「さばおり」は最近とんとお目にかかることがない技なので、誰も知らないのだろうか。不勉強の極みとしかいいようがない。十両の相撲を中継する若手アナウンサーは総じて勉強不足と思える誤りが多い。北出清五郎、杉山邦博といったOBによる研修会を開き、徹底して教育していただきたい。

(1997年11月14日記)


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