1月11日より大相撲一月場所(というのが正式名称なのです)が始まる。
今場所の焦点は大関貴ノ浪の横綱昇進ということになるのだろうが、相撲雑誌ではそれよりも元大関小錦の業績を振り返る記事が多く、貴ノ浪の横綱への期待というものがあまり盛り上がっていないようである。しかし、私はぜひ貴ノ浪には横綱になってほしいと思っている。なぜならば、貴乃花に対抗し得る数少ない力士の一人だからである。それについては先場所の展望に書いたので多くは述べない。相撲のスケールという点では貴乃花をしのぐ力士である。ここ数場所の勢いは横綱に昇進してきた過去の力士と変わらぬものを持っているだけに、期待できよう。正攻法だけが相撲ではない。貴乃花、曙、貴ノ浪と個性豊かな3横綱が鼎立したら、それだけでも面白いではないか。大鵬時代に柏戸、佐田の山、栃ノ海とバラエティに富んだ横綱が覇を競ったように。
曙は先場所全休しただけに今場所は多くを臨むのは酷だろう。しかし、今場所、彼が脇役に徹する気になれば、面白い存在となることは間違いない。優勝を狙うのではなく、貴乃花の壁としてあの豪快な突き押しを披露してほしいのである。今、真っ向から貴乃花に挑んで勝てるのは曙、貴ノ浪、武蔵丸の3人だけと断言しても差し支えなかろう。無欲で臨む方が曙は結果が出ると思うのだ。優勝の大穴にあげておいてもよかろう。
武蔵丸には今場所もチャンスがあると思う。問題は一場所を戦い抜く精神的なスタミナにある。天敵貴ノ浪戦がポイントとなることは誰もが指摘するところ。先場所の反省をもとに巻き返しを期待したい。
鍵を握るのが若乃花だ。体力的なスタミナが15日間もたないというのはしかたないところ。それよりも「これぞプロの技」といえるすばらしい相撲を見せてくれればそれでよい。
関脇以下では出島の休場が痛い。武双山のように怪我の後は上位に通用しない並の力士になってしまわないか。その武双山だが、今場所はせめて横綱大関の誰か一人を倒して大器健在というところを示してほしい。
今場所大暴れしそうなのは千代大海である。先場所上位に当たり、自分の相撲がどこまで通用するかの感触を得たことだろう。となると、あの突き押しは上位には脅威である。豪快な力相撲を見せてくれることが大いに期待できる。
新入幕の旭天鵬は正攻法で相撲の筋もいい。しかし、幕内で15番とれるだけのスタミナが続くかどうか。意外と線が細い力士なのである。なんとか勝ち越すだけの力はもっているが、あまり多くを望むのは酷かもしれない。
さ、貴乃花です。優勝を逃した次の場所の貴乃花は強い。同じ失敗を二度繰り返さない。結局は「終わってみたら貴乃花」となるのではないか。ただ昨年は油断したとしかいいようのない相撲で前半戦に取りこぼすことが多かった。今場所も伏兵にころりといくかもしれない。それがあってもまわりの力士がみな勝手にこけてくれる。優勝争いの本命は結局貴乃花といわざるを得ない。
今場所も跳んだり跳ねたりばったり落ちたりという相撲を立て続けに見せられるのだろうか。それだけは無しにしてほしいなというのが偽らざる本音なのである。
(1998年1月10日記)