大相撲小言場所


平成十年名古屋場所展望〜新横綱若乃花土俵に

 昔から、名古屋場所は平幕優勝のでやすい場所だ。
 前の場所との間があまりあいていないということや、海外公演がはさまりやすいということもあって、力士たちが稽古不足となったり調整を失敗したりしやすいのが原因だろう。そのうえ、梅雨と真夏の切り替わる気候の不純な時期なので、体調を崩しやすいということもある。
 と、前置きしておいてだ、今場所の焦点はなんといっても新横綱、若乃花勝の相撲だろう。綱を張ったからといってそう劇的に相撲が変わるというものでもないだろうが、初日の相撲を見る限りは、先場所と同様安定感のある相撲で、まずは安心。しかし、これが15日間続けられるかというと、私は悲観的だ。もともとスタミナには不安がある。それを立ち会いの変化などでしのいできた人だが、変に横綱相撲を意識してすべて正攻法でいくと、途中で息切れしてしまう恐れは十分ある。
 だから、優勝争いでは武蔵丸あたりにチャンスがあるとみていいだろう。
 曙と貴乃花は、先場所と同じ弱点を抱えたまま場所入りした。曙のもろい下半身、そして貴乃花のモタモタした動き、何も変わってない。貴乃花は場所前に珍しく優勝宣言をしたらしい。たぶん、それは自分を奮い立たせるためにそうしたのだろうと思われる。絶好調時の貴乃花は「自分の相撲を取るだけで、結果は後からついてくると思います」てなことばかり言っていた。つまり、自分の相撲に自信があったのだ。今場所の発言からは、自信よりも、ここらでなんとか……という焦りみたいなものを感じてしまった。
 ダークホースは出島。休場あけの先場所、相撲勘をすぐに取り戻し、引かれても落ちない彼らしい相撲を見せてくれた。さすがに終盤は息切れしたけれど。今場所は先場所の相撲から自信をもったことだろうし、ひょっとすると上位の星のつぶしあいからするりとトップに出てくる可能性は十分にある。
 休場あけの栃東、まだ初日は動きがぎこちなかったが、星を重ねていくにつれてスムーズに動くようになるだろう。そうすると、こちらも目を離せない。
 ともかく、先が読めないのが名古屋場所。ハプニングが起こりやすい場所。今年はどんなドラマが展開されるのか。

 それはそうと、新横綱のことを「三代目若乃花」というがこれは誤り。江戸から明治にかけて不知火という横綱が二人でている。紛らわしいので名前の頭文字をとって、「不知火(諾)」と「不知火(光)」と呼びわけている。初代若乃花と二代目若乃花はともに「幹士」という名で番付に載った。今度の若乃花は「勝」という名である。したがって、慣例通り、新横綱は若乃花(勝)と表記すべきである。スポーツ新聞も相撲雑誌もみんな「三代目」と書く。これは明らかに誤りであることをはっきりさせておきたい。

(1998年7月5日記)


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