大相撲小言場所


平成十年九州場所展望〜貴乃花の独走か〜

 先場所、貴乃花が優勝したら、あれだけ騒がれていた洗脳がどうしたとかいう話が治まった感がある。あれはいったいなんだったのか。とはいえ、相撲の雑誌に載ってる「巡業だより」の記事なんかを読むとやっぱり貴乃花と若乃花は口をきいてないみたいだから、騒動の尾を引いてはいるのだろう。
 あれだけ騒動になったのに、秋場所の客足は思ったほどのびなかったようで、満員御礼の出ない日もあった。だからだろうか、相撲協会から箝口令でも敷かれたように二子山親方は一方的に終結宣言を出してしまった。それで解決するわけでもないだろうに。
 その上に若乃花が花相撲のトーナメント戦で足を傷めて一時は出場を危ぶまれたというようなこともある。おそらく先場所のような若貴決戦への期待というようなことはできないだろう。
 情けないのは曙だ。場所前の稽古で腰をやられて休場だ。引退の危機などという生易しい段階ではない。なんだかんだいっても貴乃花を真正面から倒すことができるのは曙くらいしかいないのに。
 武蔵丸はいいところまでいっても立ち合いがまずいので相手十分になられる相撲が場所に何番かある。体が重過ぎるのではないだろうか。動きの鈍さをここ何年かは感じさせる。貴ノ浪にいたっては日によって相撲が違い過ぎて強いんだか弱いんだかその日にならないとわからないというまるでタイガースの中込みたいな存在になってしまった。
 関脇以下でも、千代大海は突き押し相撲特有のムラがあるし、出島は腰でも悪いのか以前には見られなかったもろさが出てきた。栃東はまだこうなったら絶対という形ができていないので大物を食うことはあっても優勝を争えるだけの地力がついていない。琴乃若はかなり相撲が積極的になってきたけれど「強い」と唸るような相撲はない。
 よって、今場所はもう13日目くらいには貴乃花の優勝が決まってしまっているんじゃないだろうか。そんな気がしてならない。貴乃花の「勝つ」ことへのこだわりは先場所たっぷり見せられた。今場所もおそらく気持ちは変わらないだろう。
 私は新入幕の大碇と休場明けの土佐ノ海に頑張ってほしいと思っている。大碇は私の出身地である京都から久しぶりに出た幕内力士なのでね。しかも実家に非常に近いところの出身なのだ。典型的なツラ相撲で勝ち続けてる時はいいが負けだすとなかなか止まらない。体もそう大きいわけではないので勝ち越しも難しいかもしれないけれど、なんとかあの小気味よい押しで幕内に新風を吹き込んでほしいものだ。
 新十両の雅山は、幕下で連続優勝して注目されているが相撲が雑すぎる。しこ名を発表した時、私は「雑山」と読み間違えてしまったぞ。幕下で通用しても、関取相手にはどうか。特に智乃花のような老練には苦戦しそうだ。
 しかし、今場所は先場所ほど見どころがないなあ。両大関の奮起を待ちたいところだ。

(1998年11月7日記)


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