大相撲小言場所


平成十一年夏場所展望〜武蔵丸の横綱昇進はあるか〜

 今場所の焦点は、先場所優勝した大関武蔵丸の横綱昇進ということになる。いわゆる「綱取り」というやつである。相撲雑誌でこの「綱取り」という言葉に品がないと嘆いてられる方がいたけれど、私も同感。横綱を取ってはいけない。横綱というのは品格力量抜群な力士に与えられる称号であって、取りにいくものではあるまい。
 さて、その「綱取り」である。私は望み薄であるという気がする。大関になったり横綱に上がったりする力士というのは、その直前の数場所というものは勢いや力強さを感じさせるのだけれど、武蔵丸にはどうもそれが感じられないのである。地力はある。だから勝ち星もあがる。しかし、どうもそれだけのように思われてならないのだ。実際に場所に入ったらもしかしたらものすごい気迫で勝ち進むかもしれない。そうなったら横綱は向こうから転がり込んでくるだろう。しかし、春場所の相撲を見ているとそんなに急に化けるかなと首をひねらざるを得ない。
 他の横綱大関陣もしかり。貴乃花と千代大海の休場は予想されていたことではあるが、若乃花も曙も休場あけの場所。多くは期待できない。特に曙は3場所連続休場からの復帰だ。まず土俵の感触に慣れて勝負勘を取り戻さなければならない。それにはちょっと時間がかかるだろう。勝ち越せて合格点といっていい。貴ノ浪は先場所は随所にいいところを見せたけれど、これが何場所も続くかというと、これも疑問符がつく。
 となると期待したいところは関脇以下ということになる。
 特に期待されるのは安芸乃島。30才を越えるベテランだが、ここ数場所の相撲には力強さを感じる。成績次第では大関の声もかかるだろう。ただし、苦手の琴錦や武蔵丸から勝てないとなると、そこから崩れる可能性もある。安芸乃島みたいな力士が大関になると面白いし他の力士の励みにもなると思うから、ぜひ大関になってほしいのだが。
 やっと髷を結えた雅山はどうか。この力士の評価は難しい。何度もここで書いているようにこの力士の相撲は雑なところがある。これまでは持ち前の馬力と腰のよさで勝ちあがってきたが、幕内上位に上がった今場所、それだけではそう簡単には勝たしてくれないと思われる。それは先場所の終盤、上位との対戦で立ち会いの変化についていけなかったことを見ても明らかだ。ただ、その馬力で若乃花などの軽量力士を一気に持っていくようなことがあれば面白い。

 あとは栃東や出島といった故障で伸び悩んでいる力士がどこまで回復しているか。栃東は立ち会いの変化はやめた方がいい。そういう小器用な相撲を取った力士が伸びずに消えていった例は多い。おっつけを磨いて正攻法で攻めていけば大関の声も自然にかかるようになる。千代天山は故障が直りきってないみたいなので、あまり多くを期待するのは酷だろう。
 ひそかに楽しみにしているのは、再入幕の大善。先場所は全盛時代(小結に上がったころ)を思わせる相撲で十両優勝。その好調を維持できるか。

 なんか、先場所に続き、低調な場所になりそうだ。これという絶対的な優勝候補がいないからだ。なんかすんなりと武蔵丸が優勝して横綱になってしまったりするかもしれないな。若乃花や曙が立ちはだかれる状態ではないものね。

(1999年5月8日記)


目次に戻る

ホームページに戻る