大相撲小言場所


平成十一年秋場所展望〜若貴和解の影響は〜

 今場所の優勝候補は、ズバリ、曙だと宣言しておこう。休場明けから3場所目。場所ごとに相撲に安定感が出てきているし、自信も取り戻しつつある。先場所は伏兵出島に逆転優勝を許してしまったが、逆にそのことでかえって今場所はよけいに気を引き締めて臨むことだろう。
 優勝争いのライバルは、横綱2場所目で精神的にも落ち着くであろう武蔵丸、そして巡業で充実した稽古をしたと伝えられる大関貴ノ浪あたりか。もっとも、貴ノ浪は例の異能相撲が壁にあたっているという感じがするので15日間ずっと安定した相撲が取れるか疑問は残るが。
 場所前に和解の握手をしたのは、若乃花と貴乃花の兄弟横綱。これがどのような影響をもたらすか。若乃花の場合、貴乃花への意地で気力が保っていたしまた無理もしてきたという気がする。そのつっかえ棒がなくなった今場所、休場明けということもあり、以前のような相撲を取れるかどうかという危惧がある。初日の負け方は、その不安を具現化したもののように感じられた。今場所は優勝を狙うのではなく、リハビリのような気持ちでのびのびと取ってほしいものだ。場所後に引退するのではというような無責任な噂も飛び交うだけに、結果を残してほしいとも思うのだが。
 対する貴乃花だが、先場所痛めた指が完治しておらず、巡業にも参加していない。気持ちは落ち着いてはきただろうが、稽古不足は否定できないし、途中休場もあり得る。今場所は休場した方がよかったのでは。もっとも、貴乃花としては和解の握手をした以上、土俵に上がって若乃花とともにがんばるという姿勢を見せつけたいということがあるのかもしれない。どちらにしろ、期待はできない。
 新大関の出島は、先場所は大関挑戦のプレッシャーのないまま優勝し昇進したということから、今場所、本格的なプレッシャーがかかるものと見られる。となると、先場所のような思い切った相撲が取れるかどうか。千代大海は、一発勝負が信条だけに、序盤戦で波に乗れば面白い存在となるだろう。苦し紛れに引き技を連発しなければ、チャンスはある。
 ダークホースは魁皇だろう。先場所前半は見事に大関挑戦のプレッシャーでかちかちになってしまったが、大関絶望となった後半、見違えるような相撲を見せた。実力では3大関に負けないだけに、変なプレッシャーのない今場所は本来の実力を発揮するのではないか。
 武双山、土佐ノ海、栃東は故障さえなければ上位力士には脅威になることだろう。特に武双山には期待している。後輩の出島に先を越されたことで、欲が出てくればしめたものだ。
 どうも、今場所は若貴兄弟次第で全体の動きが左右されるのではないか、そんな気がする。

(1999年9月12日記)


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