大相撲小言場所


平成十二年夏場所展望〜新大関武双山休場〜

 今場所の焦点のひとつであった新大関武双山は、腰痛のために休場。横綱武蔵丸も怪我で休場。優勝争いの中心となる二人が休場したということで、誰が優勝するかという予想が立ちにくくなった。
 順当にいけば貴乃花が優勝の第一候補ということになるだろう。巡業での稽古で体重を絞り、体もかなり動くようになったと伝え聞く。問題は復帰後ずっと続く腰高の相撲。体重が減ったことによって腰への負担が軽くなっていれば先場所までの負け相撲のような無様なことにはならないだろうが。武蔵丸、武双山という強敵が不在というのも有利に働く。
 候補二番手は大関昇進がかかる雅山か。ただし、相撲内容はまだ勢いに頼ったところがあるので、その勢いを「大関」という目標へのプレッシャーが止める可能性はある。入幕した頃の雑な相撲はかなり改善されたものの、先場所の貴闘力戦のようにまだ詰めの甘いところがある。大関昇進についても、もし今場所好成績を上げたとしても、もう一場所様子を見てみてもいいのではないだろうか。相撲人気回復のためにスターがほしいのはわかるが、真に実力のある力士を大関に据えなければ、結局は逆効果になることだろう。千代大海のていたらくを見れば、同感してくれる人もいるはずだ。
 候補三番手には曙を挙げておきたい。対抗馬が不在である今場所は、かなりのチャンスだと見たい。もっとも、最近の曙はここ一番での精神的な弱さが目立つだけに、厳しいかもしれない。同じく三番手として出島も有力な候補だということができるだろう。ただし、序盤に取りこぼさなければ、という条件はつくが。大関昇進当時ははたかれても落ちない安定感があったけれども、ここ数場所の出島を見ていると、あっけない負け方が目立つ。稽古の相手には不足していないと思われるので、やはり精神的なものか。
 先場所の貴闘力のような伏兵が登場すると予想も何もあったものではないが、貴闘力の優勝なんて誰も思いもよらなかったわけだから、私としてはここまでが精一杯。
 その貴闘力だけれども、今場所は先場所のようにはいかないだろう。私としては貴闘力らしい相撲を取り切って、場内を沸かせてくれればそれで十分である。土佐ノ海も同様。気合いの入った前進相撲で上位を食ってほしい。
 新入幕で楽しみなのは栃乃花。学生相撲出身だが、規定により前相撲から取った叩き上げの力士。同じ新入幕で学生相撲出身の琴光喜が休場してしまったので、よけいに栃乃花の地味ながら筋のいい相撲に期待したい。
 さて、最後になったけれど、千代大海と貴ノ浪の両大関である。千代大海は大関の座にしがみついているような印象がある。いつ陥落してもおかしくない。気合いの相撲で大関までのし上がってきた男が、その気合いを失った今、見るべきものは少ないといっていい。貴ノ浪はまたまたカド番だ。大関から陥落した次の場所、あの十勝した時の執念はどこにいったのか。とはいえ、この力士だけは突如ものすごい相撲を取って快進撃してしまったりするから、面白い存在なのだが。どちらも苦しい場所であるし、多くを期待するのは酷かもしれない。
 ともかく、立ち合いの変化や引き技にもろい力士が多すぎる。今場所こそはもっともっとあきらめない粘りのある相撲を多く見せてもらいたいものだ。それでこそ、板井氏の「八百長発言」への答えとなるだろう。

(2000年5月6日記)


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