ここのところ大関陣の入れ替わりが激しいが、今場所は４大関。出島、千代大海、魁皇、雅山である。今場所の焦点は栃東の大関挑戦だ。ここ数場所の相撲を見ていると安定した四つ相撲を展開していて、いつ大関に昇進してもおかしくないとさえ思う。しかし、場所前の稽古で負傷して、体調不十分のまま土俵に上がることになりそうだ。となると、序盤戦に負けがこむという可能性が高い。巡業の形態がじっくりと稽古をして体を作り上げるというものになっていないから、場所前の部屋稽古で調子を整えようとする。その弊害が出たのではないか。
それに対して、先場所大関を陥落した武双山は巡業を休まずに土俵勘を失わせないようにしながら独自の調整で場所に望んでいる。序盤戦さえ切り抜けたら、こちらは１０勝して大関復帰の望みは大きい。
カド番の雅山も順調に調整してきていると聞く。こちらも波に乗ると勢いのつく力士だけに、一気に優勝争いをする可能性もある。魁皇が新大関の場所ということを意識しすぎずにマイペースで相撲を取れば、大関中心の優勝争いになりそうな気がする。
では横綱はどうか。先場所優勝の曙は、対抗馬の脱落があればこそ優勝できたという印象が抜きがたく、大関陣が順調に白星を重ねていくと自滅するおそれがある。もっとも、先場所で自信を回復していたらそれは杞憂に終わるだろうが。わからないのが武蔵丸で、怪我が完治していれば優勝候補の筆頭にあげるべき存在なのだが、まだそこまで回復していないようなので、ダークホース的存在になりそう。武蔵丸の場合は勢いに乗って勝ち星を重ねるタイプではないので、優勝ラインが下がると最後に笑っているかもしれない。
残念なのは貴乃花の休場で、負傷の箇所も悪く、復活がまた遠くなってしまった。
下位力士で期待するところは、栃乃花、若の里あたりか。特に若の里は十両の土俵で全盛時の馬力を思い出させる相撲を取っており、もともと自力のある力士だけに今場所の活躍が期待できそう。できれば兄弟弟子の隆乃若と二人で、鳴戸部屋の「若隆旋風」を巻き起こしてほしい。
もう一人面白いところでは小結に陥落した貴ノ浪。大関からは落ちたけれど、実力は十分ある。横綱大関に一泡吹かせる相撲を取るとしたらこの力士が一番可能性が高い。全盛時の力は望むべくもないが、元大関の意地で土俵をかき回してほしいものだ。
（２０００年９月２日記）
目次に戻る
ホームページに戻る