大相撲小言場所


平成十二年九州場所展望〜次の横綱は誰か〜

 今場所の大関は5人。出島、千代大海、魁皇、雅山、そして先場所10勝をあげて復帰した武双山である。今場所の見どころは、この5人のうち次の横綱への足場を作れるのは誰か、というところではないかと思う。
 現在の横綱は、武蔵丸、曙、貴乃花の3人。このうちコンスタントに活躍しているのは武蔵丸で、先場所の優勝も、安定した力を見せてくれた。強引に攻めず流れを作って相手を追い詰める相撲がその強さの理由だろう。今場所も優勝候補の筆頭にあげたい。しかし、曙はよく復活したけれども絶対的な強さはなく、貴乃花も故障続きで全盛時の強さは期待できない。
 となると、やはり今の大関陣の中から次の横綱を望みたくなる。ここで期待できるのは、やはり魁皇だろう。大関に昇進するまでにした回り道も、現在の彼にはプラスになっているように思われる。先場所は指を骨折しながら、新大関の場所にフタケタの勝ち星をあげた。得意の右上手にこだわらなくても勝てるという自信もついたことだろう。今場所は優勝争いにからみ、ノンストップで横綱に向かって突っ走ってほしいところだ。
 続いては武双山だ。故障がちなのが気になるが、大関に昇進した時の相撲はそのまま横綱として土俵にあがってもおかしくないほどのいい形であった。怪我とうまくつきあっていけば、横綱も期待できる。ここでも昇進までの苦労が生きていくるだろう。
 問題は残りの3人。引き癖がなおらない千代大海。引かれると前に落ちる度合いが多くなった出島。がむしゃらさが消えた分、相撲のまずさが目立ち始めた雅山。まだまだ若い彼らは、今は壁にぶつかっている時期なのかもしれない。しかし、本来ならその壁は大関に昇進する前に経験しておくべきものだったのかもしれない。この3人のうち、壁を打ち破るのは誰か。先場所、立ち会いの変化で勝った後、抗議の電話が殺到したことで反省のコメントを出してから急に突き押しが冴えてきた千代大海あたりに期待したいのだが……。
 いや、それよりも、新三役の栃乃花の方がより横綱にふさわしい相撲をとっているように思う。基本に忠実で力強い相撲をとる栃乃花こそ次の横綱を狙う一番手なのかもしれない。そういう意味で、今場所は真価を問われる場所となるだろう。時期大関候補の栃東が怪我で休場しているだけに、栃乃花の相撲により注目が集まることだろう。
 今場所活躍した大関や三役力士に次の横綱への挑戦権ができてくる。そんな場所になりそうな予感がするのだ。

(2000年11月4日記)


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