番付上は二横綱三大関だが、貴乃花は来年春場所の再起を目指して療養中、千代大海は怪我が治らず休場。武蔵丸と武双山は本場所が始まってみないとわからない。魁皇は痛めている腰の状態が最悪でだましだましの相撲をとるしかない。つまり、上位陣に期待が持てないということになる。
となると琴光喜に期待が集まるのは当然ということになる。今場所の成績いかんでは大関昇進も取り沙汰されている。しかし、私は時期尚早と思っている。名古屋場所での負け越しを忘れてはいけない。先場所の優勝は上位総崩れの上に勢いがついた結果だとみている。破らなければならない壁がない状態といっていい。よしんば今場所優勝したとしても、本当に横綱を狙えるだけの力があるのかを来場所見極めてからでも遅くはない。私は貴乃花が出場する春場所まで待ってもいいくらいだと思っている。最強の力士が不在な中でどれだけ勝ち星をのばしても、それは本当の意味での強さにはならないと思うからである。貴乃花に鎧袖一触で敗戦するようだと出島、雅山の二の舞いだといわれるだろう。今場所の優勝候補一番手に上げたい力士ではあるが、大関の最有力候補とは言いかねるのである。
それならば、栃東の方に大関の期待をかけたい。ただし、立ち合いの変化なしが条件である。本人は「上手を取りにいったら相手が前に落ちた」と言っているようだが、それは言い訳に過ぎない。相撲は勝ち負けを競うスポーツだけではなく、技を披露して観客を楽しませる古典芸能的な側面もあるのだ。力士がまげを結いまわしをしめて土俵に上がるのも単なるスポーツではないからである。栃東には優れた技能があり、安定した実力がある。関脇在位１５場所はそれだけの実力があることを示している。力強いおっつけと右四つ左上手からの攻めのタイミングのよさは他の力士には真似できないものがある。貴乃花を脅かす相撲をとった実績もある。立ち合いの変化なしで優勝争いに最後まで残ったならば、文句なしに大関昇進でいいだろう。
玉乃島、朝青龍、若の里、隆乃若がその後に続くためにも、栃東にはその規範となる相撲で大関に昇進してほしいものである。
あと、注目したいのは平幕にまで落ちた出島の相撲である。このままずるずると落ちるのではなく再び大関を狙うには、どこかで低落傾向に歯止めをかけなければなるまい。平幕に落ちた今場所を再出発の起点としてほしいものである。
（２００１年１１月１０日記）
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