先場所優勝した栃東が今場所も優勝ということになると、一気に横綱昇進の可能性もでてきた。足踏みせずに勢いのあるうちに、とも考えられるが、先場所は新大関の場所で優勝というものをそれほど意識せずに一番一番をとっていったのが栄冠につながったと見ている。もし栃東が連続優勝にとらわれてしまった場合、落とし穴はあり得る。特に苦手の魁皇を克服していない現在、優勝するならばその関門だけでも突破してなくてはならないだろう。あせることはない。まず大関としての力をじっくり蓄えてから横綱に挑戦してほしい。
とはいえ、栃東が優勝への最有力候補であることには間違いがない。それに対抗し得るのは、琴光喜だろう。先場所は好成績ながら昇進が見送られたわけだが、今場所もそれと同等の活躍ができたら大関の座は自然にころがりこんでくる。課題は精神的な強さだ。初日から大関昇進を意識し過ぎると、足下をすくわれる。序盤を落ち着いて乗り切れば、勢いもつくだろう。
カド番から優勝同点の成績を残した千代大海については、場所前だけの稽古でどれだけ先場所のような力が発揮できるかちょっと不安。先場所の活躍は、休場中にたっぷり稽古をしたためだということを考えると、あのような強烈な突き押しを維持できるか難しいところだろう。そうなると、悪い引きぐせが出ることも考えられる。
休場明けの横綱武蔵丸、腰痛の魁皇と武双山は怪我の具合で相撲も左右される。まずは得意の速攻で序盤を切り抜けることだ。
朝青龍や若の里ら期待の若手力士は上体に頼った相撲ではなく、腰で相撲をとるという基本を大切にしていけば、今場所も場内をわかせることだろう。しかし、無駄な張り手や立ち腰のままの寄りなどが見られるようだと、１５日感続けて安定した相撲がとれるかどうかは難しいだろう。
面白い存在になりそうなのが再小結の貴ノ浪。ここのところ、序盤で勝ち星を積み重ねるケースが多い。もと大関の意地もあるだろうし、また相撲そのものを楽しむ心境になったかのようである。横綱大関陣ではこの貴ノ浪に食われた力士が脱落するのではという気がする。
貴乃花が今場所も休場。この春に照準をあわせていたはずなのだが、故障の回復が遅れていて十分に稽古できていないようである。出場を楽しみにしていただけに、残念。しかし、なんとか若い力士相手に稽古を早く再開して夏場所こそ出場してほしい。貴乃花の存在感、それだけでも土俵上にないと困るのだ。
（２００２年３月９日記）
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