大相撲小言場所


夏場所をふりかえって〜武蔵丸また独走で連覇〜

 武蔵丸が快調に白星を重ね、14日目で優勝を決めた。これで優勝回数は11回。曙とともに歴代7位の記録に並んだ。先場所と同じ書き出しになってしまったが、他に表現のしようがない。千秋楽の優勝力士インタビューで「相手を近くに置いとけば(自信がある)」と言っていたが、まさにその通りの相撲で、相手をつかまえ力でねじ伏せるという安定した取り口だった。ただ、敗れた千代大海、魁皇の相撲のように、受け身にまわり腰が浮いてしまうとあっけない相撲になる。武蔵丸の連覇は、他の力士のふがいなさにも通じるものがあるように思う。14日目のインタビューでアナウンサーが「武蔵丸時代ですね」と声をかけていたが、勝ち星の上ではそういう感じにもなるのだろうが強力なライバルの不在やここというところのもろさも含めて「武蔵丸時代」と軽々しく口には出せないように思う。もちろん強いことには間違いないのだが、どうも相対的な強さのように感じるのである。
 独走を許したのは大関陣。序盤に雑な取り口で取りこぼしをした魁皇、中盤に勇み足で負けてから失速した武双山、得意のおっつけが影をひそめて全般に低調だった栃東、前半は豪快な突き押しで優勝争いをしたが大関同士の対戦で引き技を見せて自滅した千代大海。故障などの不運もあったけれど、怪我をしないようにぶつかりなどの稽古をしっかりしているはずだから、それは言い訳にはなるまい。もっとも、武双山と朝青龍の相撲は取り直しでもよかったのではないかと思う。相撲では武双山が勝っていたし指先が蛇の目の土をはいたのと朝青龍が土俵を飛び出すタイミングは微妙だった。少なくとも、この敗戦で優勝争いの面白みが減ったのだから、審判長の九重親方の判断は厳しすぎたと思う。
 朝青龍は11番勝って敢闘賞。魁皇戦の手で膝を払う投げなど技能的にも見るべき部分は多く、来場所は大関挑戦という声もあがるだろう。ただ、武蔵丸戦で立ち合いいきなり相手の足を取りにいくような奇襲は、そう何度も決まらない。大関を狙うなら、下から押し上げて真っ向勝負で挑む気概が欲しかった。
 技能賞の旭鷲山は、10勝のうち9勝が違う決まり手という「技のデパート」ぶりを発揮した。外小股などの珍手も含めてそれで8連勝した時は驚いたが、8勝目の送り引き落としなどは送り出しだと決まり手がかぶるという意識がはっきりと見られたし、後半戦は(本人のインタビューでは意識してないと言ってはいたが)勝ち星よりも技に気がいってしまっているように感じられ、それで調子を崩してしまったようだ。もっとも、こういう芸当はこの人しかできないのであって、前半の土俵をわかせた功績は大。ファンを喜ばせてなんぼというプロ意識に拍手を送りたい。
 雅山、出島の元大関コンビがともに勝ち越し。全盛期の勢いはまだ戻っていないが、自力のあるところを見せた。これから再び大関を狙う土台の場所となるか。
 十両では、怪我を克服して再十両となった五城楼が優勝決定戦に出場する活躍。投げ技の冴えなどが随所に見られた。幕内復帰を目指してほしい。
 幕下では、15枚目格で付け出された成田が初土俵。全勝すれば初土俵2場所での関取と話題になったが、7番相撲では元十両の豊桜にうまくあしらわれた。あまり一気に駆け上がられるのはいくらなんでも情けない。豊桜の意地に拍手を送りたい。
 他に目についたのは若の里、隆乃若コンビの力任せの相撲がなおってないこと、高見盛の気合いの入った相撲、負け越したが安美錦の二枚腰の技能、新入幕敢闘賞とはいえ飛んだり跳ねたり引いたり叩いたりで賞を与えてよかったのか疑問の北勝力、栃乃花や玉乃島の粘りのなさなど。
 やはり、貴乃花、琴光喜の休場は大きかった。どうも盛り上がりに欠けた。ただ、技能派力士の面白い相撲が目に止まることが多かった。そこらあたり、やはり相撲の醍醐味ではある。個性派の力士がさらに増えてくれることを期待したい。

(2002年5月26日記)


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