とにかく休場者が多かった。幕内だけで11人。十両を含めると16人。うち、横綱1名、大関3名。途中休場から再出場したものが2名。原因はいろいろと指摘されているが、要は上半身と下半身のバランスの悪さではないかと思う。朝青龍の粘り腰を見ると、よけいにその違いを感じる。土俵際、踏ん張って足首をひねり立ち上がれないという相撲が目についた。きれいなうっちゃりを見せるのは幕内では十文字くらいか。巡業の形態が変更され力士の稽古の機会が奪われているということが関係しているのだろうか。ぶつかり稽古がきっちりできていないという指摘もあった。秋場所までにどれくらい各力士が稽古を積むことができるか。なにしろ序盤戦で横綱と大関が1名ずつというのはあまりにも寂しい。
しかし、大関千代大海はよくその責任を果たしたと思う。立ち合いの変化は1番あったが、それ以外は当たりも鋭く足もよく出ていた。唯一引いてしまったのは土佐ノ海との一番のみ。特に優勝を賭けて臨んだ朝青龍戦での出足のよさといなしの鋭さには注目したい。まっすぐ引いて墓穴を掘る千代大海だけに、このいなしが身につけばそれをしないですむ。自分の相撲を取り切ってつかんだ優勝だった。
朝青龍は大関昇進を目前に、さらに気合いのはいる相撲をとれた。敗れた貴ノ浪戦は相手の相撲に合わせ過ぎたため。無用な張り手もほとんどなく、優勝争いをして12勝は大関昇進には合格点だろう。できれば、貴乃花や武双山、魁皇らが体調十分で出場している場所でこの成績をとってほしいところだが、番付には運もある。朝青龍は運を持ち合わせているのだろう。殊勲賞を手みやげに昇進となる。
若の里もまだ強引ながら、着実に力をつけている。来場所次第では大関の有力候補として名前が上がることだろう。殊勲賞の土佐ノ海は、今場所は足がよく出ていて引き技につけいる場面も多かった。来場所もこういう相撲をとれればいいのだが。敢闘賞の霜鳥、技能賞の高見盛はともに自分の形にうまく持っていき出足よく攻める相撲がとれていた。幕尻に落ちた武雄山の押し相撲、玉乃島の左四つの相撲もともに、体の動きがよく、自分の型になるのが早かった。
いや、なにより土俵をわかせたのは貴ノ浪だろう。得意の引っ張りこむ相撲は、特に若手力士には一つの関門として大きな意味を持つ。
再起をはかった琴光喜だが、惜しくも負け越し。しかし、終盤は相撲勘が戻ったのか、いい形でせめて勝つ場面もよく見られた。来場所につながる何かは残したのでは。
武蔵丸は、序盤から中盤にかけては安定した取り口だったが、12日目から4連敗で連覇を逃した。首を痛めてしまったそうだが、休場者が多いので自分まで休むわけにはいかないという感じがした。
なにぶん、人気力士の相次ぐ休場で観客も不入り。千代大海と朝青龍の踏ん張りがあったものの、全体的には低調の感は免れえなかった。
(2002年7月21日記)