横綱貴乃花が休場を発表した。先場所は、故障した膝をかばうような相撲も見られ、完治していないと思われたが、やはり連続出場できる完全な状況ではなかったようだ。ならば先場所はなぜそこまで無理をして出場したのか。それは、渡辺横綱審議委員長の「出場し、12勝ししないと引退を勧告する」という暴言があったためだというほかない。無理をしてでも出場し、ノルマとなった12勝をあげたのはすごかったが、それだけ無理もしていたということなのだろう。毎度同じことを書くのもくどいようだが、出処進退は本人が決めるべきことだ。満身創痍の状態で12勝をあげたのだ。完治してから出場していたらもっと素晴らしい成績をあげていただろう。逆に、先場所の出場が怪我を悪化させるようなことになりこのまま引退へとつながるようだと、大力士の力士生命を奪った張本人として渡辺横審委員長は責任をとり退任すべきだ。本来横綱審議委員会とは、相撲を愛する知識人を御意見番として横綱昇進について審議させるべく作られた組織だ。それまで横綱昇進をしていた熊本の宮司、吉田司家の代わりに設置されたものなのだ。それなのに相撲にひとかけらの愛情もないような人物がその地位だけで名誉職のように横審委員に就任するという現状がある。内館牧子さんを委員にしたように、小坂秀二、三宅充、もりたなるお、やくみつる、デーモン木暮といった相撲に一家言のある人々を委員にすべきではないか。
貴乃花の休場で、興がそがれてしまった感はあるが、カド番脱出をはかる栃東がどこまで復調しているか、琴光喜が再び大関に向けて足場を固められるかどうかなど、次代に向けた若手の活躍を期待できる場所ではある。いや、いつまでも貴乃花に依存するような相撲界であってはいけない。貴乃花が引退の危機を迎えようとしている今こそ、栃東と琴光喜、朝青龍たちが綱を締め、常に優勝争いをするように早くなってほしいと思うのである。
(2002年11月9日記)