大相撲小言場所


九州場所をふりかえって〜朝青龍初優勝〜

 初日から貴乃花が休場。大関魁皇は3日目の土佐ノ海戦で強引な小手投げを打ち右肩を痛めて休場。横綱武蔵丸は5日目の貴ノ浪戦で逆転の投げを打たれた際に手首を痛めて休場。大関千代大海は中日に土佐ノ海を寄り切った時に腕を痛めて休場。いずれも好調だっただけに、これで優勝争いの興味は一気にしぼんでしまった。
 優勝した朝青龍は14勝1敗と堂々たる勝ち星。内容は、瞬発力を生かした朝青龍らしいもので、切り返しや外掛けなどの足技も冴えていた。ただ、相撲の流れからでた技というよりは、自分に不利な体勢でも強引に技をかけて相手を倒すというもので、千秋楽の武双山のように無理な小手投げを打たれて肩を痛めてしまう力士もあった。今場所休場した横綱大関に加えて武双山まで休場するとなると、来場所の朝青龍は無人の野を行くようなもの。それで優勝して横綱になったとして本当の強さに結びつくかどうか。休場した力士たちが絶好調になって逆襲した時に全てを破るだけの力をつけていなければ、横綱としての値打ちはないだろう。実力はついているし素晴らしい攻めもあるが、相撲の流れをもっと大切にした取り口を心がけてほしいと、あえて苦言を呈する。
 三賞は、敢闘賞が3名。小結で11勝をあげた隆乃若(3回目)は、持ち前の力強い取り口に前まわしを確実にとるというような基本に忠実な取り口が備わってきての勝ち星だけに値打ちがある。関脇で負け越したライバルの若の里かまわしをとれなくても強引に出ていって墓穴を掘っていたのと好対照だ。意外にも今場所初めての金星をあげたベテラン貴ノ浪(3回目)は、動きがよかった。故障していた部分が直ってきたのだろう。もともと力のある力士だけに、故障さえよくなれば現在の大関陣よりも大関らしい貫禄があるからね。新入幕の岩木山の受賞は嬉しい。けれん味のない正攻法で真正面から寄っていく相撲に好感が持てた。
 三賞は逃したが、技能賞候補になった安美錦は久しぶりに彼らしい柔らかい相撲を取り、土俵際の粘りなど一筋縄では行かないものを見せた。勝ち星のほとんどを左上手投げで決めて10勝をあげた琴ノ若にも技能賞をやりたかった。左上手を取ったところで場内が沸いたのだ。こういうところを評価しないで何を評価するのか。上位陣がふがいない分、平幕の力士が熱気溢れる相撲をとったのが今場所の特徴。見ていて前半戦の取り組みに面白いものが多かったのである。
 ふがいないのは栃東と琴光喜。休場明けの栃東はまだ本調子ではないということで今場所は割り引いて考えたいけれど、初場所に優勝した取り口のような力強さが消えてしまったのは残念。琴光喜は先場所の相撲はどこにいったのか。これで復活したと思ったのは間違いだったか。どこか具合でも悪いのかおっかなびっくり相撲を取っている感じてあった。勝てないとなると、立ち合いの変化で目先の白星を稼ぎに行く。琴光喜にはそういう相撲は取ってほしくない。勝てばいいというものではない。このままでは大器が開花せずに終わってしまう可能性もあり得る。
 出足が戻ってきた雅山と出島のもと大関たち、幕尻で必死の相撲を取り続け引退の危機を脱した安芸乃島と、下位に落ちた実力者ががんばった場所であった。しかし、上位で突出していたのが朝青龍一人とはなんとも寂しい。せっかく秋場所活気を取り戻した大相撲は、今場所再び元に戻ってしまった。

 もと幕内、肥後ノ海が引退。三賞にも三役にも縁がなかったのは不思議。出し投げの名人で、左右どちらからでも投げられる強みがあった。ただ、出し投げを打つための体勢を作るのが遅かったため、その名人芸が生かされずに終わってしまったのが残念。長い間、お疲れさまでした。

(2002年9月22日記)


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