大相撲小言場所


平成十五年初場所展望〜貴乃花に挑む朝青龍〜

 横綱貴乃花が出場を発表した。
 武蔵丸と千代大海という横綱大関が休場を発表したため、貴乃花としては意地でも出場したい場所となったに違いない。なぜならば、先場所優勝した朝青龍が連続優勝を果たせば横綱に昇進することになるからである。その時に、本来ならば高いハードルとしていなければならない横綱が二人とも休場してしまっていたのでは、正直なところ朝青龍のためにも、そして相撲界のためにもならない。横綱というのは、どんなに休場してもその地位から追われることはない。その特権は、それが相撲の権威を守るべき存在だからこそ与えられているのだ。だからこそ、あっさりと昇進するようなことがあってはならないのである。
 先場所の朝青龍は、多分にラッキーであった。好調の大関二人が途中休場をし、強い横綱二人が休場をした。上でつっかえ棒をする存在が不在だったのだ。休場明けの栃東や不調の武双山ではその勢いを止めることはできなかった。
 曙や貴乃花が横綱に昇進した時は先輩横綱が続々と引退し、上に誰もいない状態であった。にもかかわらず、相撲協会は昇進基準を厳しくしてなかなか綱を締めさせなかった。ところが、朝青龍の場合は、スター待望論もあって早く昇進させたいようなムードがある。そんなムードにのっかって昇進したとしても、短命の横綱になる危険性は大である。だからこそ、貴乃花が必要なのだ。朝青龍が横綱にふさわしい実力と品位を兼ね備えるまでは、なんとしても高い壁として君臨してほしい存在なのだ。
 栃東、琴光喜、若の里ら先場所不調であったこれからを担う逸材が復活し、成長株の隆乃若が先場所のような相撲を取る。そして少しでも朝青龍を苦しめる。切磋琢磨の中からこそ、本物のスターは登場する。
 今場所は貴乃花が朝青龍に対してどれだけ意地を見せられるか、そして朝青龍がその壁を打破することができるか、そこに注目したい。相撲ファンの気持ちはみな同じだと思う。

(2003年1月10日記)


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