大相撲小言場所


春場所をふりかえって〜千代大海意地のカド番優勝〜

 カド番大関千代大海が12勝3敗で優勝を決めた。序盤戦から思い切った立ち合いと下から突き上げる威力のある突き押しで7連勝。しかし、玉乃島には腰砕けのような形で押し倒され、若の里には自分から組みにいって苦杯をなめ、魁皇には気負うところを突き落とされるなど、敗れた相撲は自滅という形のものばかり。それでも千秋楽は、1差で追う朝青龍を徹頭徹尾突っ張って引いたりいなしたりすることなく最後まで力をゆるめない堂々の勝利で優勝を決めた。あとから頭角を現し追い抜かれた朝青龍に対して最古参の大関としての意地を見せた優勝だった。2場所連続休場のブランクを見せない相撲でキャリアを見せつけた。もっとも、カド番で12勝の優勝ということになると、来場所優勝しても横綱昇進にはかなり高いハードルがもうけられることだろう。
 新横綱朝青龍は、初日の土俵入りで手順を間違えるなど、緊張の度合いが強く、本来の下半身の粘りがあまり見られなかった。敗れた旭天鵬戦など、腰高のまま寄っていって打棄り気味の掛け投げをくらってしまったし、出島戦でも立ち合いの踏みこみが浅く、自分の相撲をとれなかった。しかし、最後までなんとか優勝争いに残ったのは、新横綱としては及第点だろう。あの千代の富士は新横綱の場所はいきなり休場だったのだ。
 もう一人のカド番大関魁皇は、序盤こそ自分のペースをつかみ切れずもたついていたが、終盤、硬くなる千代大海や朝青龍が突っ込んできたところを軽くいなして勝つなどして、10勝まで星をのばした。再起の場所としてはまずまずだろう。
 序盤から黒星を重ねた武双山は栃乃洋戦で脱臼、途中休場となった。古傷の再発ということで公傷は認められないそうなので、来場所は怪我が治り切らなくても出場しなければならない。本当は、徹底的に完治するまで休ませてやりたいところなのだが。
 期待の若の里は序盤にもたつき9勝止まり。隆乃若の休場で張り合いがなかったのか。終盤になってやっとエンジンがかかってきたが、時既に遅しといったところか。元大関コンビの出島と雅山は、勝ち相撲は往年の強さを見せたが、どうしても足が流れる傾向があり、相撲内容はよかったが星がのびなかった。しかし、来場所以降に期待の持てる相撲を見せた。
 技能賞は人気一番の高見盛。右を深く差したら絶対という型が今場所も随所に見られた。幕内で一番大きな拍手をもらえ、勝手も負けても大歓声で迎えられる。師匠の高見山がそうだった。貴重な存在である。
 旭天鵬は敢闘賞だが、新横綱に初黒星をつけたという意味では殊勲賞でよかったのでは。優勝力士に土をつけたら殊勲賞、というわけではあるまい。三賞の意味に関わる問題ではないか。
 あと目についたのは十文字。相撲開眼とまではいかないにしても、何か決め手をつかんだという気がする。相撲にスピード感がでてきた。この感触を来場所につなげられるかが問題だが。

 幕下筆頭に陥落していた大善が引退、富士ヶ根親方を襲名することになった。38歳、府立体育会館の近くで産まれ育った浪速っ子。稽古熱心で相撲に取り組む態度が誠実であった。決して手抜きをしない相撲で、身体は小さくとも小結まで昇進した。こういった力士こそ、若手は手本にしてほしい。長い間お疲れ様でした。

(2003年3月23日記)


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