大相撲小言場所


平成十五年秋場所展望〜魁皇連覇の場合は……〜

 先場所優勝の大関魁皇には、本来なら今場所横綱昇進がかかることになる。なぜならば横綱昇進に関する内規によると「品格力量抜群のもの」で「2場所連続優勝またはそれに準ずる成績」をあげた大関に横綱の免許が与えられるのである。
 ここには優勝の勝利数などどこにも触れられてない。しかるに北の湖理事長は先場所の12勝という数字は横綱を狙う基準足り得ないとはっきりと発言した。理事長の現役時代はどうだったか。1974年夏場所、大関で優勝した時の勝利数は13勝である。翌名古屋場所、大関北の湖は13勝1敗で千秋楽を迎えたが、横綱輪島の下手投げに屈し優勝決定戦となり、そして決定戦でも輪島に全く同じ形で下手投げで敗れたのである。それでも場所後、北の湖は横綱に推挙されている。もし、北の湖理事長なら、自分のこのみじめな逆転負けに対してどういうだろうか。
 双羽黒廃業以降に昇進した横綱の例を見てみると、旭富士から朝青龍までの6人のうち、若乃花勝のみ昇進直前場所の優勝が12勝である。13勝云々をいうならば若乃花の昇進の時にもそういう話がでてもいいわけだ。しかも、この時の若乃花は、まだまだ強かった貴乃花や貴ノ浪、貴闘力、安芸乃島と対戦しないで12勝である。
 もちろん、番付はその時によって運不運がある。しかし、理事長の発言はその運不運さえも相撲をとる前に封じるものではないだろうか。ならば、15戦全勝、しかしすべて立ち合い変化のはたきこみという相撲であれば理事長はどう言うだろう。私にはあの高く細い声で言うのが聞こえてくる。
「勝ち星の問題ではない。内容が問題だ」。
 横綱武蔵丸がまたも休場するという状況で、朝青龍と結びの一番で優勝を争えそうなのは魁皇ではないのか。実力は既に横綱クラス。小結で初優勝し、大関で3回優勝している魁皇だからこそ、たとえ12勝であっても優勝したのだから横綱への挑戦権くらい与えてやってもいいではないかと思う。4大関のリーグ戦を勝ち抜いて優勝をもぎ取った精神力ならば、品格のあるよい横綱になれると思う。
 横綱審議委員会とは何のためにあるのか。時の理事長の個人的な発言で横綱昇進のハードルが変わるようでは、横綱の権威というものもあやしくなってくる。
 たとえ11勝4敗の優勝でも、魁皇は横綱に昇進させるべし。もし全勝優勝したとしたら、理事長は発言を撤回するのだろうか。とにかく優勝した大関に場所前から「横綱にはしないよ」と言ってやる気を失わせることで、土俵がつまらなくなったとしたら、それこそ理事長の発言を問題にしなければならないだろう。魁皇は腰痛で苦しいようだが、なんとか文句なしの優勝をしてみせてほしい。

(2003年9月6日記)


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