11日目まで土つかずが4人。朝青龍、千代大海、魁皇、朝赤龍。12日目から直接対決があり、朝赤龍に敗れた魁皇がまず脱落、13日目には千代大海に敗れた朝赤龍が脱落。14日目には千代大海が魁皇の寄りに土俵を割り一歩後退。千秋楽、優勝をかけた一番は、上半身がつっこんだ千代大海を朝青龍が突き落として2場所連続の全勝で幕を閉じた。最終的には横綱が番付通りの格の違いを見せつけたかっこうになったけれど、最後までファンを引き付けるいい展開の場所だった。
朝青龍は、序盤こそ強引につり落としにいこうとするような相撲も見られたが、7日目の琴光喜戦で琴光喜の粘り強い相撲に苦戦してからは相手の動きをよく見た相撲に変わっていった。9日目の安美錦戦では土俵際の投げの打ち合いでギリギリの勝利をもぎ取る。逆に優勝争いの直接の相手と対戦した終盤の方が力の差を見せつけるような相撲になっていた。朝青龍はこれで30連勝。速さ、うまさ、力強さは別格となってきた。
千代大海と魁皇は序盤は千代大海が引き技で辛うじて勝ったり魁皇が強引な相撲でねじ伏せたりと必ずしもいい相撲ばかりではなかったが、勝ち星が積み重なるに従って相撲内容もいいものになっていった。しかし、両者とも横綱戦では力みかえってあっさりと敗れてしまったのは残念。互角な内容の相撲が見たかった。
朝赤龍は、粘り腰に力強さが加わり、理想的な相撲をとった。先場所までの足腰の粘りだけに頼る形ではなく、積極的に前に出る相撲が光った。敗れはしたが、千代大海との死力を尽くした突き押しの相撲が印象に残る。殊勲賞と技能賞の同時受賞は当然という場所であった。もっとも、今場所は勢いがついていたという面もあり、千秋楽の若の里戦では自力の差を見せつけられたという感じか。
カド番脱出の武双山、辛うじて勝ち越した若の里は、勝ち相撲の内容と負け相撲の内容の楽さが激しかった。武双山はもうベテランの域に達しているからともかく、若の里はこれから大関を狙うとなるともっと緻密な相撲もとれるようにならないとこのままで終る危険性がある。4日目の霜鳥戦で見せた吊りはみごとだったから、今後は吊り寄りの形を身につけまわしをとって引きつけたら相手があきらめるような相撲を目指してほしい。
敢闘賞は琴ノ若。今場所の成績いかんでは引退も考えたというが、その開き直りが功を奏したといえるだろう。「ミスター1分」は健在で、10日目の高見盛戦は久々の水入り相撲。これで高見盛にスタミナ負けしなかったのが自信につながったか。
期待していた琴光喜は負け越し。負けが続くとなかなか立ち直れず傷口を広げてしまうというあたり、精神的なもろさを感じる。
栃東は左肩の骨折で途中休場。公傷制度がなくなったために来場所も休場すると大関陥落もあり得る。しかし、陥落直後の場所で10勝以上したら大関に復帰できるという特権もあることだから、万全の体調に戻してから土俵に復帰してほしい。
幕下では17歳のホープ萩原とブルガリア出身の琴欧州が来場所の十両昇進を確定的にした。両名とも体を柔らかく使い腰の備えもいいので、今後が楽しみである。
激しい優勝争いなど、見どころの多い場所であった。毎場所こういうもつれた展開になってほしいものだ。
(2004年3月28日記)