大相撲小言場所


夏場所をふりかえって〜朝青龍、北勝力を決定戦で下す〜

 朝青龍の連勝は35までのびたが、6日目、北勝力の圧力に思わずはたいたところを一気の出足で持っていかれ、ストップした。その北勝力はその時点で3大関を下しており、一気に優勝争いのトップに立つ。11日目、朝青龍は旭天鵬の吊りにあっけなく敗れ、2敗。北勝力は徹頭徹尾突き押しの相撲で14日目まで勝ち進み、平幕優勝に王手をかけた。しかし、さすがに初めての体験でかたくなったのか、新入幕の白鵬の立ち合いの変化に足がついていかず、悔しい2敗目。朝青龍は12日目以降は立ち直り、千秋楽までの大関戦も難なく勝ち進み、久しぶりの優勝決定戦となった。
 こうなるとやはり横綱は強い。苦し紛れに引いた北勝力につけいり中にはいると一気に寄り切った。3場所連続7回目の優勝である。
 優勝した朝青龍は、下位力士相手に圧倒的な力の差を見せつけようとつり落としを仕掛けに行ってみたりと相撲に雑さが見られた。下位相手に油断をするという、これまでにも少々見られた傾向が今場所ははっきりと出てしまったといえる。もし、大関陣が本調子で先場所のように優勝争いに加わっていれば、優勝は危なかったかもしれない。
 健闘したのは北勝力で、大関陣や三役力士のふがいなさをよくカバーしてくれた。腰高の上突っ張りからはたくというパターンがあり、それが北勝力のよさを殺していたのだが、今場所に関しては引き、はたきがほとんどなく、それが好結果につながったといえるだろう。相撲の神様がついていてくれたような、そんな場所であった。殊勲、敢闘両賞の同時受賞は当然である。
 横綱を狙いに行くという気迫が見られなかった千代大海と魁皇は、ともに北勝力での敗戦をきっかけにずるずるといってしまった。体調が万全でなかったということなのだろうか、年齢的にもこれからそうチャンスはないだろうから、万全に仕上げて本場所を迎えてほしかった。負け越しに終った武双山も含め、今場所をつまらなくした張本人だろう。
 玉乃島は初の技能賞。左四つの型を持った力士だけに、怪我が治ればやはり強い。今場所は出足もよく、のびのびと相撲をとっている感じだ。19歳の新入幕、白鵬は柔らかい体とスピード感のある相撲で、敢闘賞を受賞した。ただ、千秋楽の北勝力戦でみせた立ち合いの変化は気になる。これからの力士だけに、楽をして勝つことを覚えるのはよくないと思う。
 若の里、琴光喜のホープは勝ち越しはしたものの、負ける時のもろさが気になる。気分的なものもあるのだろうが、うまくいかない時でもなんとかしのぐ勝利への執念が見たい。
 全体に大味で魅力の少ない場所であった。それを救ったのが北勝力だろう。優勝決定戦まであったのに、内容的には先場所の方がはるかに面白かった。

 元大関、貴ノ浪が2日目に敗れて引退。相手に中にもぐられてからが勝負という異能力士であった。おそらくこういう力士はもうでてこないのではないだろうか。私はこの力士のユニークさが大好きだった。大関から陥落したあとも長く土俵にのぼり続けた。若手の関門のように立ちふさいでいた。それだけの存在感があったのだ。長い間、お疲れ様でした。

(2004年5月23日記)


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