大相撲小言場所


秋場所をふりかえって〜朝青龍自滅で魁皇5度目の優勝〜

 魁皇の7場所ぶり5度目の優勝。この結果はさすがに予測できなかった。魁皇には腰痛という大敵があり、今場所はずっと痛みが出ずに15日間をとり終えたという。ここに勝因があったといえるだろう。ただ、私はそれよりも朝青龍が12日目に3敗を喫したという、つまり優勝の最有力候補が自ら脱落していったことが一番大きかったのだと思う。朝青龍が今年前半のような好調さであったら、魁皇の優勝はなかっただろう。7日目までに2敗を喫した魁皇は、いわばいつもの場所と同じようなペースであった。ところが、朝青龍が自滅して黒星を積み重ね、自分に優勝のチャンスが訪れたという段階で、魁皇の表情が明らかに変わった。気力は充実し、不利な体勢からでもあきらめずに相撲をとるようになった。千秋楽の朝青龍戦など、いつもの場所なら勝敗が逆になっていてもおかしくない相撲だった。その気になった時の魁皇は強い。それを証明してみせた場所だったといえるだろう。
 対する朝青龍だが、場所前の結婚式などで稽古不足になっていたというが、初日から3日目の相撲は、自身に満ちあふれて堂々としていた。ところが、4日目の栃乃洋戦で上体が伸びて足が流れたところを突き落とされた相撲で流れが変わった。負けるわけがないという過信が、自分の相撲を見失わせた。5日目の岩木山戦は、強引にいって下から突き起こされ何もできないまま押し出されるという完敗。6日目以降は慎重な相撲でなんとかしのいだが、12日目の雅山戦でやはり突き起こされて押し出された時には、表情はうつろで何が起こったのかわからないというような感じだった。13日目以降は、完全に緊張感が切れ、勝ち方を忘れたというような相撲になってしまっていた。親方との関係も含めて、相撲に対する姿勢全体を改めるきっかけになるかどうか。もしここで失敗したら、朝青龍はポカの多い金星配給横綱になってしまう可能性もある。「来場所は鬼になるよ」とは4敗目の時点での談話だが、有言実行となるかどうか。
 前半をリードしたのは出島と旭鷲山。特に旭鷲山は、相撲の基本に忠実な正攻法で相撲をとり、逆に相手が戸惑って敗れるという感じがあった。ただ、後半上位との対戦などで失速し、三賞も受賞できなかったのは残念なことだ。この2人に何もないのはおかしいと思う。
 後半の主役は栃乃洋だ。横綱に勝ってから尻上がりに調子を上げ、千秋楽、琴ノ若に勝てば優勝決定戦出場の可能性もあるというところまでもっていった。おなじみの粘り腰で土俵際での強さを見せつけた。3度目の殊勲賞は当然だろう。
 敢闘賞は新入幕の露鵬。前半は前に出るよい相撲であったが、後半から引き技を見せることが多くなったのが残念。黒海のように、引きを封じて強くなったという手本があるのだから、ぜひ見習ってほしいものだ。同じ新入幕の琴欧州は、三賞こそのがしたもののみごと勝ち越し。懐の深さをいかんなく見せつけた。負け越しはしたが、もう一人の新入幕の豊ノ島も持ち味であるきびきびした相撲で土俵をわかせた。幕内のスピードに慣れれば、さらに上位も望めよう。
 もう一人の敢闘賞は琴ノ若だが、上位との対戦はなく千秋楽に絶好調の栃乃洋を倒して受賞が決まった。ここらあたり、旭鷲山や出島と比較すると、琴ノ若が敢闘賞というのは、私には解せない。悪くはなかったけれども、土俵を盛り上げるというところまでいっていなかったように思う。重い体をフルに使った岩木山(負け越したけれど)や、全盛時の相撲に近づいてきた雅山の方が三賞にふさわしい活躍だったと思う。
 不運だったのは大関復帰の栃東。3日目の旭天鵬戦で膝を土俵に突いて負傷、途中休場に追い込まれた。やはり途中休場となった武双山は、限界がきているように感じられた。あとは本人がその事実をどう受け止めるか、だ。
 いつもいつも朝青龍では、やはり面白くない。拮抗するライバルがいてこそ土俵内容は向上する。そのことを改めて感じさせた場所であった。

 元関脇安芸乃島の千田川親方が、貴乃花部屋から高田川部屋に移籍する希望を貴乃花親方に申し出たが、貴乃花親方は拒否。結局病床の二子山親方が了解し、北の湖理事長の判定にゆだねるという結果になった。千田川親方は、貴乃花親方にとってはよき先輩。それなのに年寄名跡を争ってこのようなトラブルが起こったのは残念である。境川元理事長、時津風前理事長が年寄名跡に関してなんとかしようと苦心していたけれど、結局は抜本的な解決にはならなかったようだ。北の湖理事長の手腕が問われるところである。

(2004年9月26日記)


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