大相撲小言場所


平成十八年夏場所展望〜新大関白鵬誕生によせて〜

 今場所の注目の的はやはり新大関白鵬の相撲だろう。相撲雑誌や新聞などでは新大関場所での優勝を期待する文章も見られるが、今場所に限ってはやはり優勝候補の一人ではあっても実際に優勝するのは難しいのではないかと私は考えている。大関昇進決定から本場所までの行事ラッシュや、大関という地位ならではのプレッシャーなど、相撲に集中できる環境とはいえないからである。これまでの新大関に対してもここで書いてきたように、新大関の場所は10勝できればすばらしいできであると評価したい。
 ただ、白鵬に期待するのは星勘定ではなく相撲内容である。将来の大横綱を期待させる正攻法での堂々とした取り口が白鵬の魅力であるのだから、常にしっかりと当たる立ち合い、そして四つに組んでの寄りを主体とした攻めを毎日見せてほしい。自分の相撲さえとっていれば勝ち星は後からついてくる。そして横綱という最高位も、だ。
 今場所は栃東の横綱挑戦という話題もまだある。先場所は星ひとつで横綱を逃した形となった栃東だが、今場所優勝もしくは13勝以上の勝ち星で来場所の横綱昇進のチャンスが残っている。私はチャンスを生かす可能性は高いと考えている。というよりは、今場所を逃すと次のチャンスはなかなか訪れないのではないかと思うくらいである。理由としては、朝青龍は先場所優勝したとはいえ絶対的な強さを誇っていた時期とくらべるとかなり力が落ちていること、白鵬は新大関で実力を十二分に発揮できないと予想されること、琴欧州は先場所の故障の影響がまだあるのではないかと思われること、千代大海と魁皇はカド番の時のような必死さで立ち向かってはこないだろうと思われることなどがあげられる。つまり、気力と勢い、そしてモチベーションなどは栃東が一番高い状態にあると思われるのである。あとは星勘定を意識し過ぎなければ優勝に一番近い存在なのである。
 新入幕の把瑠都の存在も面白い。幕内下位ならば先場所見せた大きな相撲は通用するだろうし、もし勝ちこんで終盤上位と対戦した時にどれだけその力が通用するかもみものである。
 今場所も力と技のせめぎ合いを数多く見られる白熱した場所にしてほしいものである。

(2006年5月6日記)


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