大相撲小言場所


名古屋場所をふりかえって〜朝青龍優勝、露鵬土俵外の乱闘〜

 それは7日目に起こった。大関千代大海が向正面土俵下に露鵬を押し出した後、土俵下で両力士が何やらにらみ合い、険悪なムードを漂わせている。露鵬は二字口で礼もせず土俵を降りた。その後の報道で、両力士が口頭で注意を受けたこと、露鵬が千代大海の入っている風呂のガラス扉を叩き割ったこと、そして露鵬に群がる報道陣に対して暴力をふるい、カメラマンに怪我をおわせたことなどがわかった。なんというみっともない、恥ずべき行為だろうか。プロの力士が怒りに任せて無防備な相手に手をかけるとは。カメラマンも新聞社の人間であり、決して興味本位な覗き趣味で写真を撮ろうとしたわけではないだろう。これに対し、理事会は謹慎3日間という処分を発表し、北の湖理事長はまるでカメラマンが悪いかのような発言をした。原因がカメラマンにあったとしても、力士が一般人に手を出してはいけないのである。謹慎あけの記者会見のもようをテレビで見たが、大嶽親方も露鵬も心から謝罪しているようには、私には見えなかった。謹慎3日間の処分は甘いといわざるを得ない。甘くて今場所いっぱいの出場停止、厳しくすれば露鵬に対して引退勧告をするくらいの厳罰を下さなければ、今後このようなことが繰り返し行われてしまうと思うのだ。今場所は、相撲史上、最大の汚点を残した場所として後世に語り継がれるだろう。露鵬の行為も、協会の対応も含めて。
 土俵上では、すっかり人格者と化した朝青龍が、大関から横綱へと駆け上がってきた頃を思い出させるスピードと緻密さを全面に出した相撲をとり、初日から14連勝してあっさり優勝を決めた。ライバルと目された白鵬は初日、ガチガチに上がって体が動かず朝赤龍に送り倒された。9日目には雅山の引き足についていけず、朝青龍の独走を許してしまった。テレビ放送では刈屋アナウンサーも北の富士さんも舞の海さんも割の順番を変えて独走させなければよかったと発言していたが、私は、それは違うと思う。白鵬は全勝で横綱を追いかける展開にもちこまなければならなかったのだ。大関2場所で連続優勝ならば横綱昇進の価値はあるが、やはり大関3場所以上のトータルをみて昇進は決めるべきだろう。そういう意味では、場所前から13勝ラインという数字を明言した北の湖理事長は、無責任であるといいたい。「連続優勝」という内規を重視すると明言すべきだったのだ。来場所は、一から出直しということでいいかもしれない。たとえ優勝したとしても昇進させるべきではない。それならば今場所は昇進の規準となる「優勝に準ずる成績」をあげたとみなされたことになるからである。
 逆に、雅山は大関に再昇進させてもよかったと思う。少なくとも、5人の大関のうち、雅山の成績を上回ったのは白鵬ただ一人だったのであるから。雅山の成績が大関にふさわしくないのならば、魁皇、千代大海、栃東、琴欧州は大関から陥落させてもいいくらいだと思うのだ。
 8連勝でカド番を脱出した後、怪我の再発で7連敗した栃東、終盤腕を傷めて失速した千代大海、勝ち越しがやっとの魁皇と琴欧州。朝青龍の独走を許したのは彼らの責任でもあろう。
 把瑠都はまだ相撲が雑である。ふところに入られても残せるスケールの大きい相撲は、かつての貴ノ浪のような変則的な技があってこそ生きるのだ。
 敢闘賞の玉乃島、技能賞の玉春日は、ぎりぎりまで優勝争いに踏みとどまったところに価値がある。ただし、幕内下位ならばこの成績は当然ということもできるかもしれないからな。
 とにかく、露鵬の暴行事件、W昇進見送りと、協会の対応の不手際を感じさせる場所であった。

(2006年7月24日記)


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