大相撲小言場所


初場所をふりかえって〜朝青龍20回目の優勝〜

 12日目あたりで朝青龍の優勝が見えてしまい、案の定14日目に20回目の優勝が決まってしまった。朝青龍の相撲は相変わらず速くてうまいけれど、大関陣が自滅して早々と優勝争いから脱落し、横綱戦ではどの大関も横綱の弱点を攻めるような相撲をとれないのだから仕方ない。唯一の黒星をつけた出島の相撲を見れば、立ち合いから一気の出足で根こそぎもっていけば横綱は以外ともろいということがわかるはずなのに。出島はこの金星を含めて3勝しかできなかった力士であるにもかかわらず、だ。
 先場所は豊真将、今場所は豊ノ島と、平幕下位の力士が星をのばして優勝争いについていくというパターンが続いたけれど、これら若手がもし優勝決定戦に出たとしても、経験豊富な横綱の敵ではないということは明らかだ。形の上では優勝争いをしてはいるけれど、実質的には独走だ。琴光喜など、絶好の体勢になりながら「もっといい体勢になってから攻めようと思った」らしく、じっと動きを止めてしまい、横綱が盛り返してくるのを待つような相撲をとっている。他の力士が相手の時は、多少無理な体勢でも積極果敢に攻めているというのに。場所後、週刊誌に八百長疑惑が報じられたけれども、たとえ星の売り買いがなかったとしても、勝とうとしない相撲ばかり見せられたのでは八百長と疑われても仕方あるまい。
 膝の怪我が治らぬまま負け越し覚悟で土俵に上がった栃東。勝ち星ほしさに立ち合いの変化で稀勢の里との勝負を逃げ、他の相撲でもまわしにこだわって大関昇進前の大きな相撲がとれなくなった琴欧洲。千秋楽に辛うじて勝ち越したが、負ける時はまったく踏ん張れなかった魁皇。土俵勘が戻らず持ち味の柔らかい相撲をとれずに終った白鵬。どの大関も引退寸前みたいな相撲ばかりとっている。元気だったのは千代大海だけだが、横綱との直接対決で突っ張りの力を全てそらされてしまってあと一歩およばなかった。だが、今場所は得意の小刻みな突きが回転よく出て、悪くはなかった。
 平幕の豊ノ島は小さい体を生かして相手の中にもぐり、速攻で勝負を決め、12勝をあげて敢闘賞と技能賞を獲得した。この相撲が来場所も続けられるかどうかはともかく、自分の相撲はある程度つかんだのではないだろうか。
 豊真将は、前半上位との対戦で負けが続いたが、中盤から安定した相撲で勝ち越し。琴奨菊もがぶり寄りという自分の型を定着させつつある。惜しくも負け越した稀勢の里も、相撲内容は積極的で今年中の大関もあり得るのではないか。不慮の事故で父親を亡くした安馬もその悲しみを土俵にぶつけるような激しい相撲で見事に勝ち越した。
 若手は力を着実につけてきている。それを実感させたのが唯一の光明というべき場所であった。

(2007年1月22日記)


目次に戻る

ホームページに戻る