白鵬が全勝優勝、場所後の横綱昇進を確実にした。21場所続いた朝青龍単独横綱という状態に終止符が打たれたのだ。少し強引さも目についたけれど、安定した取り口と基本に忠実な相撲は横綱にふさわしい。特に優勝を決めた千代大海戦は、小刻みな突っ張りをうまくあてがって力をそらし、万全の体勢に組みとめる相撲で、うまさと力強さを感じさせた。
朝青龍は、9連勝はしていたが強引さが目につき、それが10日目の安美錦戦の負けにつながった。中にもぐられところを強引な小手投げにいき、もぐられて一気に持っていかれた。さらに12日目の千代大海戦は大関の突き押しをまともに受け、なすすべもない完敗を喫する。魁皇、琴欧洲との連敗は、気力の尽きた朝青龍がどうなるかをはっきりと示した相撲だった。稽古不足を気力とスピードで補ってきたが、そのどちらかが欠けるともう朝青龍を支えるものはない。来場所以降、白鵬の成長に反比例するようにずるずると下降するかもしれないと思わせる。
大関陣では千代大海が勝ち星は10勝にとどまったが、朝青龍を倒した一番などは全盛時を思い出させるものがあった。大関在位場所数も貴ノ花に並んだ。ただ、やはり一場所通して活躍できるスタミナはもうないようである。魁皇も序盤から中盤にかけては力強い相撲が復活した。一番若くいきのいいはずの琴欧洲がもっとも衰えているように思われる相撲なのはどうした事だろう。大関昇進では白鵬を抜いたのに、このままでは大関の地位を維持するのがやっとということになりそうだ。
平幕では元大関の出島、普天王がともに8連勝して優勝争いを面白くしてくれた。普天王は途中で失速したが、額を切って流血し「俺はブッチャーか!」と年にも似合わぬコメントを発するなど、支度部屋でも楽しませてくれた。出島はいつものように途中で息切れする事もなく、12勝をあげ8年ぶりの敢闘賞を受賞した。
殊勲賞の安美錦は粘りとうまさの相撲で全勝の横綱に土をつけたのが評価された。技能賞の朝赤龍も今場所は攻めの相撲が光り12勝をあげる活躍を見せた。それに対し、今場所期待された豊真将、琴奨菊、稀勢の里ら若手力士は壁にぶち当たったか気力が空回りするような場面が多く見られ、負け越した。彼らが大関を狙うようでないと、場所が盛り上がらない。
とにかく今場所は白鵬の相撲に尽きる。どのような横綱ぶりを見せてくれるのか、今から楽しみだ。
場所前、大関栃東が引退を表明した。先場所の休場の原因となった血圧上昇などの健康不安が理由である。膝の故障、肩の故障など、万全の体調で相撲をとる事がなかなかできなかったのは気の毒であった。しかし、おっつけの強さ、父ゆずりの投げのうまさなど、技巧と力強さがほどよくミックスされた名大関であった。今後は玉ノ井部屋を継承すべく親方修業に精進することになる。長年、お疲れ様でした。
(2007年5月27日記)