大相撲小言場所


平成十九年九州場所展望〜岐路に立つ相撲協会〜

 時津風部屋での新弟子リンチ殺害事件は、刑事告訴の前に協会より処分が下され、元双津竜の時津風親方が解雇されることになった。そしてまだ現役に意欲を見せていた時津海が急遽引退し、新たに時津風部屋を継承した。亡くなった時太山に暴行を加えたとされる力士は全員休場。協会は外部から人を招いて監視機構を設けた。そこには好角家として知られる漫画家のやくみつるさんなどが名を列ねており、横綱審議委員のような名誉職的な色合いはない。
 今回の事件で、普通にぶつかり稽古をしていても、見学客からは「リンチ」とみなされてしまうようなことも起きているという。ただでさえ稽古不足が指摘されている相撲界だけに、行き過ぎた配慮がないように望みたい。
 それにしても、北の湖理事長の危機管理能力のなさはどうしたものか。自分の育ってきた相撲界を守ることに汲々とし、逆に傷口を広げているように思われる。北の湖に変わる人材がいるのなら、現役時代の実績や一門の勢力争いなどとは関係のない視点で理事長を選ぶべきだろう。
 そんな中で行われる九州場所である。いろいろな意味で注目もされるだろう。特に初日の理事長による協会ごあいさつは、朝青龍の謹慎の時のように通常通りのあいさつですませることはできまい。ここで理事長がどのように相撲ファンに語りかけるのか。おおげさなようだが、ここで前回のように「今場所も新進古豪が全力を尽くしてファンの皆様に熱戦をお見せいたします」というようなあいさつをしたとしたら、相撲協会の姿勢そのものに疑問符がつき、財団法人の資格を失うようなことにもなりかねない。
 そういう意味で、今場所は岐路というべき場所であり、朝青龍が復帰する来場所と合わせて注目すべき場所になるだろう。
 優勝争いの本命白鵬は動くまい。豪栄道がどのような相撲を見せてくれるかも楽しみの一つだ。そして進退を賭ける魁皇の相撲にも注目が集まる。稀勢の里、栃煌山、豊真将ら若手が優勝争いに加わってくれれば、より面白い場所になるだろう。
 期待したい。

(2007年11月10日記)


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