大相撲小言場所


平成二十年初場所展望〜朝青龍の再起はなるか〜

 二場所の謹慎期間が明けた横綱朝青龍は、帰国時の記者会見などでは神妙に頭を下げたり、巡業でも愛想をふりまいていたりしたが、年末はモンゴル帰国を申し出てみたり、それがならないとなると沖縄にリゾートに行ったりしている。横綱審議委員会の稽古総見では白鵬と三番稽古をしてみせ、場所前の稽古でも豪栄道らに強いところを見せつけたりもしたそうだ。
 ならば、朝青龍は再起できるのか。
 私は、無理ではないかと予測している。二場所も本土俵から遠ざかった力士がそんなに簡単に勝負勘を取り戻せるか。また、モンゴル帰国前は自室にこもって体も動かしていなかったのだ。帰国中にどのようなトレーニングを積んだかは知らないけれど、彼が謹慎している間に他の力士は本場所でしのぎを削ってきたのである。朝青龍の勝負強さや運動神経のよさはわかっているが、それほど相撲という競技は甘くはないと思う。場所前の稽古で強さを見せつけて仕上がり十分と新聞などでは報道しているけれど、当たりそうな相手の前で目一杯やっておいて「横綱は強い」と思わせるための稽古ではないかと思っている。力を誇示してはいるが、それは不安感の裏返しだという気がするのだ。
 横審の総見では早めに稽古を切り上げようとしたところ白鵬から「もういっちょ」と声をかけられて稽古を続け、最初の稽古では白鵬を圧倒していたのに番数をこなすうちに白鵬の方が強さを見せたという記事もあった。白鵬はじっくりと仕上げているのだろう。秋、九州と連覇した自信もあるはずだ。特に九州場所14日目にみせた千代大海との激しい相撲は白鵬の内部に横綱としての自信を持たせたに違いない。
 今場所、朝青龍はそこそこは勝つに違いない。しかし、復帰即復活とはいかないだろう。また、二場所も本場所を離れていた力士に簡単に勝たれていたのでは、他の力士たちはあまりにふがいないではないか。
 今場所、朝青龍があまりいい成績をあげられなかったとしたら、春場所以降どのように鍛えなおしていくのか、あるいはやる気を失うのか。そこからが朝青龍の力士としての真価を問うものとなるはずだ。
 だから、今場所朝青龍が簡単に優勝などしてしまうと、朝青龍は自分を正当化し、ますます手のつけられない存在になっていくだろう。それは大相撲全体においても不幸なことになると思う。よって、白鵬以下、全ての力士が朝青龍を倒すよう全力を尽くしてほしい。長年相撲を愛好している者として、心からそう望んでいる。

(2008年1月12日記)


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