まいった。
まさか朝青龍が14連勝して千秋楽に横綱同士で優勝決定戦をするところまでいくとは予想だにしてなかったのだ。実際、序盤は腰が座らず、初日の稀勢の里にしろ7日目の嘉風にしろ、詰めの甘さがなければ朝青龍の負けでもおかしくなかった。しかし、序盤さえ切り抜ければ、本場所の土俵で稽古をしているような朝青龍が波に乗らないわけがない。終盤はかつての強さが戻ってきたかのような相撲ぶり。千秋楽の白鵬戦こそ立ち合い失敗して敗れたけれど、決定戦では本来のスピードで白鵬の懐に入り、みごとに寄り切って23回目の優勝を決めた。土俵は朝青龍の活躍で活気づいたが、それに比例するように所作や態度もまた無礼なものに戻ってしまったのは残念である。朝青龍はやっぱりヒールとして生きていく道を選んでいるのだろうか。
白鵬は9日目の把瑠都との一番で大相撲をとりその際腰を傷め、10日目の日馬富士戦で不覚をとった。しかし、終盤は琴光喜の休場による不戦勝や千代大海の突き膝による白星など幸運も手伝い千秋楽まで朝青龍と優勝争いを繰り広げたのはさすが。決定戦で敗れたが、負けて覚える相撲かな。来場所につながる敗戦である。
大関陣では琴欧洲が10勝。最後まで優勝争いに踏みとどまることができなかったのは残念だが、相撲内容は戦場所よりも格段によくなっている。魁皇はなんとか勝ち越してカド番を脱出。千代大海は例によって終盤息切れして千秋楽に勝ち越すのがやっと。琴光喜は足首の負傷で連敗を重ね途中休場。日馬富士は新大関でかたくなり過ぎ初日から4連敗したが、中盤から本来の速攻を取り戻して勝ち越しまで持っていったのは立派だった。来場所は初日から本来の相撲を取って優勝争いに顔を出してほしい。
期待していた稀勢の里は初日に朝青龍に敗れたのが響いたか、千秋楽にやっと勝ち越した。そんなもので満足していては困る器なのだが。前半を盛り上げたのは把瑠都と栃煌山。特に把瑠都は豪快さの中に緻密さがミックスされて従来よりも大関に近づいた感じだ。両力士とも連勝が止まったあと力つきたようにずるずると連敗してしまったのまでいっしょとは。
殊勲賞は該当者なし。敢闘賞は下位ながら11勝をあげた豊真将が受賞。技能賞は豪栄道の速攻相撲が評価されて初受章。若手は入れ代わり立ち代わりという感じになってきたな。
朝青龍の久々の優勝で盛り上がった初場所だったが、この執念相撲がどこまで持続するのか。ちょっとでも油断したら元の木阿弥になりそうな気がする。だから、あえて「復活優勝」とは書かなかったのだ。
(2009年1月25日記)