大相撲小言場所


平成二十二年名古屋場所展望〜相撲界、どん底からの復活なるか〜

 夏場所中に「週刊新潮」でかきたてられた「琴光喜野球賭博問題」は、相撲協会存亡の危機というべき大問題に発展していった。
 木瀬親方の暴力団員への維持員席斡旋問題は木瀬部屋の閉鎖にまで結びつき、暴力団との付き合いを断ち切ろうという動きが出始めた矢先の事件発覚であった。
 私は折に触れてブログでこれについて書いてきたので、その時の気持ちをそのまま伝えられるように、引用する。

  暴力団組員にチケットをまわしたということで、元肥後ノ海の木瀬親方と元大竜川の清見潟親方に処分が下った。木瀬親方は委員から平年寄りに降格、清見潟親方は譴責処分。しかも戦後初という部屋の取りつぶしまでが決まった。
 そらまあただ単に暴力団組員にチケットをまわしたというだけやなく、テレビに映る席を用意し、組員はそこから刑務所に入っている組員に元気な姿を見せるということをやってたというんやからね。なんというか「便宜をはかった」どころの騒ぎやおまへんで。
 興行物に暴力団との付き合いはつきものやということはよくあることではありますが、やっぱり文部科学省のもと財団法人という法人格を受けていて、税金が免除されたりしている「協会」なんやから、いくらつきあいがあるにせよ、ここまでやったらあかんわな。果たして木瀬親方にそれだけの自覚があったかどうか。
 琴光喜の野球賭博疑惑は事実関係が確認でけてへんので処分にはいたらなんだそうやけれど、ここらあたりは疑惑で名前があがった琴光喜や元貴闘力の大嶽親方、元益荒雄の阿武松親方らすべてが「貴乃花グループ」というなんか裏のありそうな展開で協会幹部の「貴乃花派つぶし」やないかという声も聞かれるだけに、理事会としてもあまり露骨に処分しにくい事情があるんやろう。
 それにしても部屋の取りつぶしというのは厳しいなあ。それくらいせんと財団法人の資格を剥奪されるということなのかもね。それでなくても朝青龍やら理事選やらとにかく土俵外での話題が多すぎるもんなあ、相撲協会。
 気の毒なのは所属力士ですわ。特に臥牙丸は将来三役も期待できる力士だけに、こんなことでその芽をつぶすようなことになってほしくない。所属力士は出羽一門のどこかの部屋にあずかりということになる。いっそのこと本家の出羽海部屋に移籍させたらどうでしょう。師匠の元鷲羽山の出羽海親方は現役時代から厳しい稽古で知られた人やから、有望な若手に厳しい指導ができるんやないか。徳真鵬、清瀬海、深尾ら立派な体の力士がもたもたした相撲しか取られへんのは師匠の指導にも問題があるんやないかと思うていたしなあ。(5月27日)

 相撲協会もなんですね、わざわざ力士が野球賭博をしていたと記者会見を開くなら、ちゃんと暴力団との関係などを徹底調査したうえでやったらええのに、力士の自己申告で「仲間うちだけで賭けていた」というのをそのまま発表するかね。そんなんいちいち言うても仕方ないやん。「賭けマージャンもしてました」なんてのまで報告せんならんようになるぞ。かえって不自然やとは思わんのかなあ。
 そのうえ横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長が把瑠都の祝賀会のあいさつで「把瑠都と琴欧洲のどちらが先に横綱に手をかけるかは横一線。ある意味、賭けの対象となります」なんてあいさつをしたそうな。このじいさん、握ってるんと違うやろうな。「でも力士にとって賭け事は禁じ手。相撲賭博はいけません」とつけくわえたそうやけど、シャレにならんよ、シャレに。ギャグのつもりで言うたんやったら、センスを疑うね。
 こんなじいさんを委員長にしておくくらいなら、デーモン小暮閣下を委員長にしたらええ。しゃべりのセンスも頭の回転も鶴田委員長よりよほどええんとちゃうか。(6月12日)

 野球賭博にかかわって琴光喜が暴力団に脅されていたことを白状したら、実は大量に野球賭博にかかわっていた力士、親方、床山から呼び出しがいたことが発覚した。
 これ、全員の名前を公表し、琴光喜みたいに名古屋場所の出場をみんなが辞退したらえらいことになる。場所そのものが成立しなくなる。力士出身の理事たちは隠そう隠そうとし、外部理事は公表して膿を出し切ることを要求しているという。
 名前が出ているのは琴光喜、豊ノ島、大嶽親方と、みんな日本人力士やないか。博打にうつつを抜かしている暇があったらその分稽古して白鵬に対抗してくれや。強すぎる白鵬をなんとか倒そうと研究するよりも、どこの野球チームが勝つかということを研究しててどないするねん。
 こういう時こそ貴乃花親方は自分の味方の力士や親方をかばうんやなくて、毅然とした姿勢で真相を明らかにするように動いてほしいんや。
 どうなるのか、今後の動向が気になる。ほんま、協会最大の危機かもしれんぞ。(6月16日)
 私は子どものころからの相撲ファンです。
 その相撲が見られなくなるかもしれん。
 相撲というのはあれだけの巨体の持ち主たちが絶妙のバランス感覚で取り組む、実に奥の深い格闘技であります。
 その相撲が見られなくなるかもしれん。
 相撲は単なるスポーツではなく伝統芸能でもあるのです。今時ちょんまげを頭に乗せてる人たちがごく普通に受け入れられているなんて、ほんまに不思議な世界やと思う。
 その相撲が見られなくなるかもしれん。
 暴力団の食い物にされる博打好きの力士たちのせいで。
 なんかもう腹が立つとか悔しいとかそういう次元やない。
 いろんな不祥事が立て続けに起こり、それでもなんとか乗り越えようとしていたのに。
 豊ノ島、豪栄道、豊響……。新たに野球賭博がらみで名前が出たのは、みんな私の好きなお相撲さんばっかり。みんなこのままやめていったら、土俵は寂しくなるなあ。
 でもかばいようがないよなあ。
 情けないで、ほんまに!(6月18日)

 大相撲の力士たちによる野球賭博事件やけれど、今週発売の週刊誌がそれぞれの角度からいろいろと書きたて始めた。コンビニでその記事だけ「巡回」してみたんやけれど、一番生々しかったのが「アサヒ芸能」ですな。現役の暴力団員に取材して、微に入り細を穿つようにその実態をあばきだしている。
 さすがというかみごとというか。暴力団関係の記事ならば「アサ芸」というだけのことはあるね。これはさすがに琴光喜の賭博常習を最初に記事にした「週刊新潮」でも食いこみにくいところやろうなあ。
 それにしても、今回名前があがってきた力士のほとんどが大学相撲か高校相撲の出身者ですわ。中卒から角界に入っている力士の方がかえって相撲にだけ打ちこんでたりしているのかもしれんね。大学の相撲部では何を学んできたんかいな。
 まあ、相撲が強いというだけで大学に入れたような人がほとんどで、しかも相撲部という狭い世界でお山の大将になってふんぞり返ってたりしてた人もいてるし、三顧の礼で大相撲入りし、幕下付け出しという特権を与えられた力士は下積みの苦労も知らなんだりするわけで、そういう力士の方が考え方も甘くなるやろうから、かんたんにひっかかるのかもしれんね。
 NHKも名古屋場所の相撲中継をやめる可能性があり、そうなると私にとっては相撲を見るという楽しみが奪われることになるから、そんなんやったらいっそのこと場所そのものを中止にしてくれた方がええなあ。
 それにしても横綱として重責に耐えている白鵬が気の毒でならん。今が気力体力とも充実している時期だけに、こんなことでは相撲に集中しきれないで連勝記録がストップしたりするかもしれんな。
 長年の相撲ファンとしては白鵬や把瑠都にベストコンディションで土俵に上がってほしいので、決着がつくまで本場所の開催を見合した方がええのかもしれん。(6月23日)

 大相撲名古屋場所の番付発表延期ということで、これは琴光喜除名を想定してのことか、名古屋場所開催中止を想定してのことか、どちらにでも対応できるようにということか。
 どっちにしてもまともな形で本場所を開くことはおそらく不可能やろう。
 ところでNHKに相撲放送の中止を訴える人たちのうち、ふだんから相撲中継を見ているのはどれくらいの割合なのか、知りたいな。私は中継してほしい。どんな不祥事が起こったとしても、本場所を開催し、野球賭博に全く関わってない力士が汚名返上をとがんばっている姿は見たい。白鵬が見たい把瑠都が見たい琴欧洲が見たい日馬富士が見たい。
 相撲に関心のない人は見なんだらええことですやん。もしやってるのに見られへんということになるなら、受信料をちゃんと払うている者の一人としては納得でけん。
 協会と博打好きの力士はいかん。そやけどちゃんと精進してる力士はどうなる。そういう力士を応援したい者の気持ちはどうなる。こういう時にふだん相撲に関心のない者がしたり顔で批判するのに対しては言うてほしくないなと思う。
 ともかく、これで開催中止の可能性が濃厚になったようには思うね。ファンとしてはつらいのがありますよ。(6月26日)

 琴光喜と元関脇貴闘力の大嶽親方は角界追放ということになりそうですな。大口の賭け金で派手に博打を打っていて、それが暴力団の資金源になっていた可能性が高いとなると、これは止むを得まい。その他の力士も大量謹慎という形で名古屋場所は開催されそうや。
 こうなったら閑散とした会場で博打を打たん力士たちが必死に相撲を取るしかないやろう。
 武蔵川理事長も謹慎となるもようで、この際やから元横綱武蔵丸の振分親方に年寄名跡を譲って武蔵川部屋も代替わりしたらどうやろう。理事長がそうしたら、他の親方連中も少しは気を引き締めることやろう。
 新理事長にはクリーンなイメージのある元大関魁傑の放駒親方が当面就いて、角界を改革する意識の強い貴乃花親方をbQの事業部長に抜擢し、ゆくゆくは貴乃花理事長という道筋をつけるくらいのことをしてくれれば、相撲ファンにもそうでない人にも納得がいくんやないか。また外部顧問として角界を離れた元横綱の輪島さんや元大関のKONISHIKIさんを招聘し、角界の外で経験した苦労を協会に生かしてもらうことも考えてはどうか。
 元幕内片山の証言によると「野球が楽しくて相撲どころでなくなった」そうやから、野球賭博一掃後は各力士が相撲に純粋に打ち込み、白鵬や把瑠都に対してもこれまでよりもずっと内容のある相撲を見せてくれたらいうことなし。
 もっとも、土俵上でどんなに熱戦を展開しても、現状ではそこは評価されにくいやろうなあ。幕下で必死になって相撲を取る若手たちの姿なんかもっと目に入らんやろうからなあ。(6月28日)

 大相撲の大関琴光喜、大嶽親方をはじめとする野球賭博問題に対する処分が決定。すでに報道されていた内容通りのものなので、厳しいとも甘いとも何とも思わず。
 それよりもニュースで流されていた武蔵川理事長の謝罪会見にはがっかりです。妻は「なにも変わってへん。またやるわ」と感想を述べたけれど、そう言われても仕方ない。
 先代時津風親方の新弟子リンチ事件の時も、露鵬、白露山、若ノ鵬の大麻事件の時も、朝青龍の暴行事件の時も、北の湖理事長、武蔵川理事長両名とも「このようなことが二度と起こらないように」と言うて頭を下げていた。「このようなこと」が個別の事象をさすならば、二度と起こしていないわけであるけれど、「このようなこと」はこれらの場合「反社会的事件」という意味やないとあかんやろう。そういう意味では結局何度も繰り返しているということになる。
 今回こそ理事長は「社会的な良識に反する行為」とはっきり言わなならなんだはず。そやのにまた「このようなこと」ですましてしもうたわけで、長年相撲を見続けてきたファンとしては、どのように非難されても仕方ないこういう会見がまた繰り返されたことが残念でならん。
 次は「どのようなこと」で理事長は謝罪することになるのか。想像もしたくない。(7月4日)

 NHKが大相撲の生中継放送の中止を発表した。
 親方会の総意で中継の中止を申し入れたりもしたそうや。
 NHKには中継中止を要望する意見も多く寄せられたという。
 楽しみを奪われた気分であります。
 ふだんから中継を見ない人は痛くもかゆくもないやろう。あるいは17時くらいから三役や横綱の相撲だけ見て事足れりとしている人もなんの支障もないやろう。18時から幕内の相撲のダイジェスト放送はやってくれるらしいから。
 私は違う。
 HDDレコーダーに幕下の相撲から結びの一番まで録画して、仕事から帰宅して見るのを楽しみにしているんや。そのかわりBSでのダイジェストは三段目の相撲から全部やる、とかいうことは、まあなかろう。
 毎奇数月のささやかな楽しみを奪われた。
 みなさまのNHKですもんねえ。視聴者の怒りの声はちゃんと番組に反映せんといかんよねえ。それはわかるよ。わかるけど。
 でも、見たいものは見たいんやっ!(7月6日)

 さて、こうやって書いたものを読み返してみると、なんかこう悔しさとか情けなさとかいろいろな感情がにじみ出ている。混乱の中で、賜杯も優勝掲額も辞退という力士にとってはモチベーションの下がる状況で開催される名古屋場所に期待するものは、なにか。それは、どん底から這い上がってほしいという思いである。博打嫌いで知られる高見盛あたりが怒りの15連勝なんてやってくれたら、懸賞を中止した永谷園も考え方を改めるだろうし(その懸賞のほとんどは高見盛にかかっていたのだ)。
 それでも多くの力士は集中力を欠いてしまいがちになりそうな気がする。どんなに素晴らしい熱気のこもった土俵を展開しても、問題はそこにはなく協会の体質にあるのだと一言の下にはねのけられ、無実の力士たちの真摯な土俵などかえりみられないだろうから。
 どうなるのか予想もつかない。ただ、私は面白い相撲が見たいだけなのだが。

(2010年7月10日記)


目次に戻る

ホームページに戻る