大相撲小言場所


秋場所をふりかえって〜白鵬62連勝〜

 文句なし! 危なげないところはどこもなく、54連勝で千代の富士に並んだ稀勢の里戦こそ立ち合いのあたりでぐらつかされたが、腰から下は全く盤石。安定した相撲で4場所連続の全勝優勝を白鵬が飾った。大関陣は序盤で自滅。14日目までついていっていたのは平幕の豪風と嘉風のみ。場所前に予想した通りになった。「勝つと思うは思えば負けよ」と美空ひばりの「柔」を好んで歌うという白鵬だが、まさにその心境だろう。
 大関陣は把瑠都は膝の怪我で受け身になるともろく、琴欧洲は精神面でもろく、日馬富士はやはり故障で本来の鋭い動きができず、魁皇はなんとか勝ち越すのがやっと。これでは優勝阻止どころか連勝ストッパーも期待できない。
 稀勢の里は相変わらずむらっ気のある相撲で負け越し。琴奨菊もぱっとせず。それに代わって台頭してきたのが栃煌山だ。出足は鋭くなり、これまでならはたきに前に落ちていたのが落ちなくなった。新関脇で10勝、堂々の技能賞である。
 平幕の尾車部屋コンビ、豪風と嘉風は今場所は出足が良く下半身もしっかりしていて2人そろって敢闘賞。ただし、これだけ勝ちながら上位との対戦が組まれなかったのは疑問が残るが。
 注目の謹慎明けの十両力士たちは、豊ノ島が14勝1敗で優勝。格の違いを見せつけた。豪栄道も雅山も2ケタ勝利は順当なところ。豊ノ島の「連勝の横綱に当たりたい」は、偽らざる本音だろう。隠岐の島も10勝。豊響きだけが負け越した。幕内に戻る来場所が楽しみだ。
 とにかく白鵬のための場所だった。

 岩木山が引退。心臓が悪く相撲が取れなくなったのだから仕方ない。馬力でぶちかます力強さが印象に残る。いかにも愚直でまじめそうな力士だっただけに、今後関ノ戸親方として後進の指導に当たるというが、ぜひ弟弟子の豪栄道にあの前進相撲を伝授していただきたい。長い間、お疲れ様でした。

(2010年9月26日記)


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