大相撲小言場所


初場所をふりかえって〜白鵬6連覇、稀勢の里と琴奨菊の躍進〜

 横綱白鵬が14勝1敗で18度目の優勝。これで昨年春場所から6場所連続の優勝となった。場所中に風邪をひいたため、9日目の豊真将戦では上手を切られてバランスを崩しあと一歩で押し出されるところを脚一本で踏みとどまり辛勝。11日目には稀勢の里の休みない攻撃に土俵際でバランスを崩して押し出された。それでも12日目以降は落ち着いた相撲で確実に星を重ね、14日目に把瑠都を呼び戻しのようなすくい投げで下して優勝を決めた。安定感という意味では全盛時の朝青龍以上だろう。
 だからこそ、高いレベルでのライバルがほしい。大関陣は白鵬の牙城に及ばない。琴欧洲はムラ気があり日によって別人のような相撲をとり安定感がなく、12日目で3敗目と早々と優勝争いから脱落。10勝がやっと。把瑠都は10日目の阿覧戦でよかった方の右ひざを傷めて以降は生彩を欠いた。日馬富士は先場所休場した故障あがりで最初から多くを望めず、なんとかカド番脱出の勝ち越しを決めたのみ。白鵬戦では下半身の粘りがなく自らのつきひざでの敗戦と稽古不足がはっきりとみてとれた。魁皇は、大関候補の稀勢の里を下すなど存在感を見せてくれたが、多くを望んではいけないだろう。
 この状況を打破してくれそうなのが関脇以下の大関候補たちだった。殊勲賞の稀勢の里は白鵬キラーといえる活躍で2場所連続の10勝。詰めの甘さと雑さがみられるが、勝つときの力強さはいよいよ本物かと思わせる。11勝で技能賞の琴奨菊はがぶり寄りの型にはまった時の強さが光った。あとは型を作るまでの動きをどうするか。豊ノ島は2日目に白鵬に寄り切られたあと調子を崩し背中が反り身になり7連敗。しかし、そのあと先場所の背を丸めて中にもぐる形を取り戻し、7連勝して勝ち越し。実力を見せつけた。豪栄道は2場所連続の11勝。ただし、下がると引きに行く悪い癖を直さなければ大関候補とはまだいえないだろう。栃煌山は負け越したが、前に出る力はかなり強くなってきている。彼らが来場所以降も土俵を盛り上げてくれることが期待される。
 敢闘賞は14日目まで優勝争いに残った隠岐の海。出足が良く、積極的な相撲が光った。ただ、14日目の稀勢の里戦ではプレッシャーに負け、経験不足を露呈した。しかし、優勝争いに残った経験を生かすことができたらずっと伸びていくだろう。
 他に目についたのは蒼国来。勝ち相撲の形がよくなってきた。徳瀬川は技能相撲が光る。ベテランの若の里と栃乃洋は前半に連勝して場所を盛り上げた。こういったベテランの活躍は嬉しい。
 十両では大器栃乃若が開眼。決定戦で春日王に敗れて優勝は逃したが、来場所の新入幕は確実。高安は自己最高位の十両上位でスピード感のある相撲を見せてくれた。
 白鵬に大関候補たちがどれだけ食らいついていけるか。白鵬の一人旅という様相を見せた昨年よりも、今年はもっと面白くなりそうな予感のする初場所だった。

(2011年1月23日記)


目次に戻る

ホームページに戻る